遊牧民の手織り絨毯ギャッベ。 再生板との組合わせで時代にフィットしたインテリアを

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ユネスコ世界無形文化遺産にもなっているギャッベ

ギャッベ(Gabbhh)とは、ペルシャ語で「毛足の長い絨毯」を指す言葉。イラン南西部に暮らす遊牧民が、ひと針ひと針手織りする絨毯のことです。よく知られているペルシャ絨毯の一種ですが、独特の風合いを持っているのが特徴です。

 

天然の草木染と調質効果で快適に

ギャッベの素材は羊毛(ウール)です。ウールといえば、冬のセーターなどを思い浮かべる人も多いですよね。温かく保温性が高いイメージもありますが、夏にはサラリとした感触を得られるのが特長。朝夕の気温差±30℃という厳しい高地の環境で育まれた羊毛は、優れた調湿効果を備えているため、季節や場所を問わず一年中敷きっぱなしでも大丈夫なんだそうです。

織り目が細かく、適度なクッション性と心地よい手触り。そして何より魅力的なのは色合いや模様にあります。木の実や根、葉など山の植物を使った草木染は、天然素材ならではの濃淡があって味わい深さを感じられます。化学染料を使用していないので、アレルギーを持つお子さまにも優しいといえそうですね。

 

世界に1つだけのアート作品

結婚や出産といった人生の節目に送られるというギャッベは、遊牧民の母から娘へと受け継がれていく伝統的な織物。生命の源とされる樹木や、ヤギ、ヒツジ、ラクダといった動物のモチーフに、大地へのリスペクトや未来への希望といったものが表現されているのです。

こうしたモチーフに加え、四角、丸、三角、波型などの模様を丁寧に織り込んだギャッベは、デザイン性も高く評価されるようになり2000年ごろからアート作品としても注目を集めるようになりました。

なかでもカシュガイ族が手がけるギャベの手織り技術は、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されるほど。大自然のアート作品といわれるのもうなずけますね。

遊牧民の自由な感性で織り込まれた天然素材の絨毯はどれも1点もの。同じものはありません。世界に1つだけ、と思うと、その希少価値をますます感じます。

 

無垢家具とコーディネート

世界に1点だけのrewood無垢材テーブル

 

大自然のアートともいえるギャベは、無垢材との相性が抜群。天然素材を組み合わせることで、ハイグレードな生活空間を演出することができそうです。

自然の恵みを活かした素材、という意味では「rewood」と組み合わせてみるのもおすすめ。実はギャベ=Gabbhhは、英語の「garbage(ゴミ)」に由来しているといわれています。ゴミのように扱われていたギャッベは、改良を重ねて世界で注目される存在になったわけですが、このストーリー、捨てられるはずだった座敷机を再生した「rewood」と似ていますよね。

※rewoodについてはコチラ

 

再生板と手織り絨毯の組合わせで実現するサステナブル

時間が経つにつれて風合いが増すというのも共通する点。再生板と手織り絨毯の組合わせは、持続可能なライフスタイルとしても人気の高まりを見せています。相通ずるコンセプトをもつインテリアで、個性的でありながら調和のとれた空間を実現できたらいいですよね。

天然無垢材の一枚板テーブルは、トライバルな柄のギャッベとも相性がよさそう

遊牧民の感性豊かなギャッベは、敷いてあるだけでもパワーがもらえそうな気がします。ビビッドな色合いでインテリアの要にするのもいいし、お気に入りの柄を探すのも楽しそう。気持ちも豊かにしてくれそうですね。

 

Persia&Gabbeh

ペルシャ&ギャベ展

2025年8月2日(土)3日(日)4日(月)

現地の織り子さんの実演も見られる「ペルシャ・ギャベ」展。本格的なギャベが勢ぞろいする、年に一度の大展示会が開催されます。

Persia&Gabbeh

2025年も注目の“サステナブル”と、再生テーブル『rewood』の話

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気候変動や資源の枯渇といった地球規模の問題が、いよいよ現実味を帯びてきた今。「サステナブル」という考え方は、もはや一時的な流行ではなく、私たちの暮らしの中に根づきはじめています。

ファッション、食、住まい、さまざまな分野で、「環境への配慮」と「長く大切に使うこと」が、もの選びの基準になりつつあります。そんな時代の流れのなかで、家具業界でも注目されているのが循環型素材の活用やアップサイクルの取り組み。

「CONNECT」の髙橋さんに2025年の家具のトレンドと、インテリアのアップサイクルについて話を聞いてみました。

 

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CONNECTのインスタにもたびたび登場する店長の髙橋さん

 

最近は、家具のデザインというより素材を意識しているお客さまが本当に増えています。

SDGsやサステナブルというテーマは何年も前からいわれています。

家具は長く使えば使うほど味わいが出て、愛着もわくもの。ただ、経年変化や使い勝手、家族構成の変化などで処分を検討しなくてはいけない場面も出てきますよね。

最近ではそういった場面を視野に入れて、素材そのものがリサイクル、またはリメイク可能かどうかという点を、購入の時点から気に掛ける方が多くなってきました。

家具のリサイクルは環境への負荷を減らす有効な手段ですし、不要な家具を捨てないことは、ゴミ処理の負担を減らすことができるので廃棄物の削減にもなります。

“サステナブル”は一時のトレンドではなく、この先もずっとテーマになり続ける重要な要素です。

 

2025年のトレンドは3つ

2025年に注目の代表的なインテリアスタイルとしては、3つ挙げられます。

◆ビンテージナチュラル

・自然素材を活かし、使い込まれた味わい

・無垢材とアイアンなど、落ち着きのあるアンティークな風合い

 

◆モダンスタイル

・洗練された直線的なデザインが特徴

・モノトーンや光沢のある素材との組み合わせでシンプルにまとめる

 

◆ジャパンディスタイル

・和と北欧のミックススタイル

・木材、リネン、ウールなど自然素材を多く取り入れた温かみのある空間づくりを演出

 

どのスタイルにもマッチするのが自然素材を使ったサステナブルなインテリア。デザインの好みだけでなく、環境負荷の少ない素材、製造方法でつくられているか、そういった部分にも目をむけて選んでみるのがおすすめです(髙橋さん)。

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「木を、もう一度。」──再生木材が紡ぐストーリー

 

循環型の素材やアップサイクルの取組みが進むなか、注目されているのが「rewood(リウッド)」。

「rewood」の語源は、「re(再び)」と「wood(木)」。つまり、“木を、もう一度”。

「使われていた一枚板を再生し、地球の未来を明るく」というコンセプトを掲げ、30年~40年前につくられた座敷机のアップサイクルに取り組んでいます。

インスタグラムを見てみると、現在の木材市場では見られないサイズや貴重な樹種が揃っているのがわかります。加工の工程もストーリーズにアップされていて、新たな命が吹き込まれているんだな~と感じることができます。

テーブルとしてだけでなくソファの背板として使う、オリジナルデザインも展開。世界に本当に1つだけの家具を手に入れることができるのもおもしろそうですよね。

サステナブルは“我慢”じゃない。“選ぶ喜び”へ

 

“サステナブル”という言葉は、どこか“制限”や“我慢”と結び付けられて、少し窮屈に感じることもあります。
でも、rewoodのような取り組みは、むしろ気持ちをスッキリさせてくれるというか、新しい選択肢をもらったような感覚です。

捨てることへの罪悪感や、「古いものを使っている」という意識すら感じさせず、自然と“これがいい”と思える家具になっている。それがこれからの家具選びの、新しいスタンダードになっていくのかなと思いました。

rewoodのようなアップサイクルの取組みは、“モノとの付き合い方”そのものを見直すきっかけを与えてくれているのかもしれませんね。

買って、使って、壊れたら捨てるという一方通行の消費ではなく、修理しながら育てていく。やがてまた誰かの手に渡るかもしれない。そんな循環を前提としたモノづくりは、今まさに私たちが必要としているライフスタイルの在り方だなと感じました。

 

【参考】

rewood

https://re-wood.jp/?srsltid=AfmBOoqGffaj6zpn0tb9Ef5o1mbQSiZ1CoMoldOLBdivxDP2ykqyxOGw

 

ピアノを売ろうとして気づいたこと。一生モノの家具に共通する“木の価値”

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私の家には、ピアノがあります

KAWAIのアップライトピアノで、祖父が入学のお祝いに買ってくれたものです。まだ小さかった私にとって、それはとても大きな贈り物で、記憶のなかでも強く印象に残っています。

小学4年生くらいまでは、ピアノ教室に通ってレッスンを受けていました。でも次第に他の習い事に夢中になり、通わなくなってしまいました。

大人になった今では、年に数回ふと弾いてみる程度。ほとんど出番がなくなってしまったピアノを見て、「ちゃんと使ってくれる人のところに行ったほうが幸せなんじゃないか」と思うようになりました。

そんな気持ちもあって、よくテレビCMで見かける「ピアノ売ってちょうだい♪」のような買い取りサービスに査定をお願いしてみました。製造から30年以上経っているし、値段なんてつかないだろうな……と正直、あまり期待していませんでした。

ところが、想像していたよりもずっと高い金額を提示されて、驚いてしまったのです。

普通なら「ラッキー!」と即決してしまいそうなところですが、不思議なことに心がざわついてしまい、その場で「やっぱりやめます」と保留にしてしまいました。

なぜ私は迷ってしまったのか

その理由を改めて考えてみたところ、私の中で引っかかっていたのは「想い出の価値」だったのだと気づきました。

祖父に買ってもらったこと、一緒に育ってきたこと、発表会の前に必死で練習したこと。そんな記憶が、ピアノの音や姿とともに自分のなかに刻まれていたのです。

今ではあまり弾いていないとはいえ、私の暮らしの風景の中にそのピアノは当たり前のようにあって、「いなくなったら寂しいな」と思ってしまったのでした。

ピアノって、場所もとるし、引き取ってもらえれば部屋も広くなるし、合理的には手放したほうがいいのかもしれません。でも、なんだかそれだけでは説明できない、情のようなものがあるのですね。

今では電子ピアノもだいぶ普及してきました。電子ピアノは音量調整や録音機能などもあって便利ですが、いわゆる“電化製品”の分類になるため、2~3年ほどで買い取り価格がつかなくなると言われています。その点、アップライトやグランドなどのアコースティックピアノは、ほとんどの構造が木材でできていて、きちんとメンテナンスすれば30年、40年たっても価値が残るということを今回の経験から知りました。

この話、実は「家具」にも通じる気がしています

ファストインテリアのように、手軽に買い替えられる家具が身近になった一方で、コロナ禍以降、「一生モノ」と呼ばれるような無垢材の家具への関心も高まっています。
木の家具は、時間とともに色や手触りが変わっていきます。傷やシミさえも、“想い出”として味わいになっていく。それは、私にとってのピアノと同じように、ただの“モノ”ではなく、“一緒に育っていく存在”になっていくのだと思います。

そして、メンテナンスしながら長く付き合えるところもまた、木の家具やピアノの魅力です。手をかけることで、より愛着が深まっていくのです。

貴重な一枚板の座敷机をダイニングテーブルとして再生したrewoodの家具

 

読者のみなさんの家には、長く付き合っている家具はありますか? また、これから一緒に“育てていきたい”と思える家具、どんなものを思い浮かべますか?

 

【参考】

https://re-wood.jp/

北欧×和のインテリア「Japandhi(ジャパンディ)」で、暮らしにちょうどいい居心地の良さを

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前回、『異端の奇才―ビアズリー展』で見た、アートと家具に息づくジャポニズム』では、19世紀に流行っていた「アングロジャパニーズ様式」の家具についてお届けしましたが、今回は「Japandhi(ジャパンディ)について書いてみようと思います。

先日、インテリア好きな友人の家に遊びに行ったのですが、数年ぶりに訪れた彼女の家は、以前とは違った雰囲気になっていました。彼女いわく「ジャパンディスタイルでまとめた」とのこと。

「Japandi(ジャパンディ)」とは、「Japanese(日本の)」と「Scandinavian(北欧の)」の意匠を融合させたスタイルのこと。日本の伝統的な和とニュートラルな北欧デザインがミックスされたスタイルは、とてもリラックスできて居心地のいいものでした。

 

 2010年ごろから台頭してきた「ジャパンディ」ブーム

北欧のデザイナーが日本の文化に注目したことから生まれた「ジャパンディ」は、2010年頃にはすでにインテリア業界では使われていた用語のようです。

私たちがよく目にするようになったのは2020年より少し前くらいだったような気がします。大型家具店などでも“ジャパンディ”スタイルが大きく取り上げられていたのを覚えています。

コロナ禍を経て、家の居心地の良さを求める人が多くなったこともあり、すっかり定着してきたように思いますが、ここでどんなものなのか、特徴を整理してみようと思います。

 

「ジャパンディ」の特徴

 

◆ミニマルで機能的

・和の直線的なデザインや、引き戸、障子などに見られる空間を仕切る機能的な要素がつまっている。

・余白の美を追求するレイアウト

・必要最低限のものしか置かないミニマルな美

 

◆自然素材を使う

・陶器、和紙、木工など、日本の職人技や北欧のハンドクラフト感があるものを置く

・木、竹、麻、リネンなど、自然素材を使用したナチュラルな風合いを重視

・観葉植物などグリーンを配置

 

◆配色はアースカラー

・主張しない色、例えばベージュ、アイボリー、グレージュ、淡いブラウンなどのナチュラルなアースカラーを使う

 

◆ローアングル

・日本の「座」の文化を意識した床に近い目線

・低めの家具で揃えることで開放感を演出

 

◆柔らかな光

・直接的な光より柔らかく空間を照らす間接照明が中心

・白色より電球色で温かみを出す

 

和ベースが「和モダン」、北欧ベースが「ジャパンディ」

 

和モダンと何が違うの?と思う人もいるかもしれませんね。和モダンは、日本の伝統美をベースに現代風のデザインを取り入れたもの。つまり「和」がベースになっています。

一方、ジャパンディは、北欧のスタイルに和の雰囲気をプラスするという考え方。「北欧」がベースになっているという違いがあります。

ちなみに、「ジャパンディスタイル」に向いているのは、こんな家具。

コダマ「ローバックソファ」 /木の柔らかさや快適な座り心地を感じられる天然木のローソファ。アイボリー、ベージュなどファブリックの色を選べます

 

北欧 120ダイニングベンチNRT-CH-002/アッシュ材のフレームにしっかり編み込まれたペーパーコードの座面。クラフト感とナチュラルな質感で「ジャパンディ」スタイルを実現できそう

 

ピークチェアNRT-C-156 /シンプルで機能的な美を追求した人気の高い一脚。座面やフレームの色も選べます

 

背の低い家具、「座」の文化、余白の美といったジャパンディのコンセプトは、子育て世代にもフィットしそう。実際に友人宅の子どもたちも、床でおもちゃを広げたり、ローテーブルでお絵描きしたりと、楽しそうに遊んでいました。

 

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友人宅で印象的だったのは、南部鉄器の茶器。凛とした佇まいだけれど、柔らかなフォルムを帯びた急須に日本の美しさを感じました。

日本の美学ともいえる「わび」「さび」。風合いや味わい深さを神髄とする精神と、北欧の“ヒュッゲ”(=居心地のいい空間)が融合した「ジャパンディスタイル」。日本の生活や文化にもちょうどいい心地よさをもたらしてくれそうだなと、美味しいお茶をいただきながら改めて感じたのでした。

 

 

 

 

 

奈良の大仏の大きさは? 本当の名前は? 奈良の大仏クイズ

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いきなりですが、奈良の大仏クイズです!

 

1. 奈良の大仏がある寺院の名前は?

2. 奈良の大仏の正式な名前は何でしょう?

3. 奈良の大仏が建てられたのは何時代でしょう?

4. 奈良の大仏の造立を命じた天皇の名前は?

5. 奈良の大仏の高さは何メートルでしょう?

 

さて、みなさんは全部わかったでしょうか。

実は私、1問目からわからなかったんです!知っているはずなのに思い出せない・・・。大人になるとこういうことって増えていきますよね(涙)。

答えを知ると笑ってしまうくらい簡単なんですけどね。では、答え合わせをしてみましょう!

 

1.奈良の大仏がある寺院の名前は「東大寺」

みなさん知ってますよね。私、これがなかなか出てこなかったんですよ。答えを知って笑ってしまいました。

大仏が安置されている東大寺の大仏殿は、世界最大級の木造建築としても知られています。大きさは、横幅50.0メートル、奥行50.5メートル、高さ46.4メートル。壮大なスケールですよね。

かなりの予算と労力をかけた国家プロジェクト。一説によると、当時の日本の国家予算の半分以上を費やしてつくられたとも言われています。

 

2. 奈良の大仏の正式な名前は「盧舎那仏」もしくは「毘盧遮那仏」

奈良の大仏さまと呼ばれて親しまれていますが、正式名称は「盧舎那仏(るしゃなぶつ)」もしくは「毘盧遮那(びるしゃなぶつ)」。これも学校のテストで出題された記憶がありますね。その意味は、“智慧と慈悲の光明を照らし出す仏”。当時の人たちの願いが込められた大仏なのです。

 

3. 奈良の大仏が建てられたのは奈良時代

創建は奈良時代。その後、戦乱や天災により被害を受け、鎌倉時代、江戸時代と2度再建されています。

つまり、現在の建物は江戸時代に再建された三代目。初代に比べると3割ほど小さくなっているそうです。

三代の大仏殿は巨大な木材で支えられています。初代の柱は太さ約112センチで、長さ約20.7メートルと19.5メートル、約8.9メートルの柱をそれぞれ28本ずつ使用したという記録が残っています。

二代目鎌倉時代の大仏殿の柱はさらに太く、約153センチもありました。 3割縮小された今の大仏殿でも同じくらいの大きさが使われているそうです。

一般的な木造建築の角材が12センチ角なので、比較するとそのスケールがわかりますね。

江戸時代の再建の際には大きな木材の調達が困難となり、柱を1本の丸太でつくるのではなく、短い柱を3、4本つなぎ合わせた集成材にすることで再現しています。

初代、二代目、三代目と時代が下るにつれて、適材といえる木材の調達が厳しくなり、全国におふれを出して大きな木材を調達してきたそうです。

 

4. 奈良の大仏の造立を命じたのは聖武天皇

奈良時代は自然災害や疫病、飢饉や氾濫など、社会が不安定でした。そこで聖武天皇は、仏教による国家安泰を目指そうとします。

宇宙の中心にたつ仏「盧舎那仏」を建てることで、宗教的な一体感や天皇の権威を象徴しようとしたんですね。

 

5. 奈良の大仏の高さは15メートル

盧舎那仏の高さは約15m! 圧倒的なスケールです。

顔の幅は約3.2メートル、手の大きさ約2.5メートル。とにかく大きい。

「この盧舎那大仏が国中を照らし出し、平和な世の中をもたらしてくれますように」という聖武天皇の痛切な願いの表れともいえそうです。

ちなみに大仏殿の中には穴くぐりができる柱があるのはご存知の方も多いですよね。柱に横30センチ、縦37センチ、直径120センチの穴が開いており、その大きさは盧舎那仏の鼻の穴と同じくらいの大きさなのだとか。穴をくぐり抜けると、無病息災や頭がよくなるというご利益があるといわれています。

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先日、実際に奈良の大仏を見に行ってきました。南大門の凛々しさと、大仏殿の堂々たる佇まいは圧巻でした。子どものころに修学旅行で訪れた以来だったのですが、大人になってから見ると、木造建築の美しさや力強さがより一層際立って見えました。

東大時に限らず、歴史的な建築物を次世代に残すためには、保存・修復が欠かせません。ただ、修復する際に同じような木材が調達できなくなってきているのが現状。文化財継承のためにも、木や森のことを考え、育んでいくことが必要なんだと改めて感じました。

 

 

『異端の奇才―ビアズリー展』で見た、アートと家具に息づくジャポニズム

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「異端の奇才―ビアズリー」展、滑り込みで行ってきました。
東京・丸の内にある三菱一号館美術館で開催中の私的一大イベント。会期は5月11日までですが、ギリギリのタイミングで見に行くことができました。

【異端の奇才―ビアズリー展】
東京都・三菱一号館美術館
2025年2月15日(土)~5月11日(日)
公式サイト

19世紀末のイギリスの画家、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)。25歳の若さで亡くなるまでに、「アーサー王の死」や「サロメ」など、精緻な線描で鮮烈な作品を残しました。

私がビアズリーの絵と出会ったのは、つい最近のこと。作家・原田マハさんの小説のファンになり、いろいろな作品を買い集めて読むのが楽しみになっていました。原田マハさんの小説は、表紙のイラストがどれも素敵で、その中でもひときわ私の目に強烈に映ったのが「サロメ」の表紙でした。

アイルランド出身の詩人・劇作家として名をはせたオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」をテーマにしたこの小説。血の滴る生首をなぞる指、サロメの表情―。サロメの異様なまでの執着を描写した絵が表紙を飾ります。

この絵に惹かれた私は、ビアズリーの絵を検索しました。「サロメ」のクライマックスは、宙に浮かんだサロメが斬首された預言者ヨハネの首を捧げ持ち、愛おしそうに口づけする「おまえの口にくちづけしたよ、ヨカナーン」の光景。一度見たら忘れられない作品です。まがまがしく妖艶で、私の目に鮮烈に残りました。

ビアズリー作「おまえの口にくちづけしたよ、ヨカナーン」1892~93年(プリンストン大学図書館蔵)

白と黒のモノクロームの世界、余白と精緻な線とのコントラスト。ビアズリーは幼いころから結核に悩まされており、寝る間も惜しんで夜な夜なろうそくの灯りの下で作品に没頭していたそうです。画家として活躍したのはたったの5年ですが、その作品は後世に大きな影響を与えました。

ビアズリー作「孔雀の裳裾」1893年(原画)、1907年(印刷)ロンドン、ヴィクトリア・安堵・アルバート博物館蔵

ビアズリーの絵について話し出すときりがないのですが、今回の展示で特徴的だったのは、画家の作品だけでなく、彼が生きた時代の家具も展示されていたことです。

建築家エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけた「ドロモア城の食器棚」

ビアズリーが生きた時代、イギリスでは日本の文化や芸術が注目を集め、芸術家やデザイナーたちはこぞってそのモチーフを取り入れていました。こうして生まれたのがアングロ=ジャパニーズ様式です。イギリス的「日本様式」の室内装飾やステンドグラスなどが生まれ、それらはビアズリーの作品にも大きな影響を与えたといわれています。

展示された中で特に印象的だったのは、ビアズリーが「サロメ」の挿絵に描き入れた可能性がある建築家エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけたコーヒー・テーブル。イギリス流の日本といった雰囲気を感じさせる作品です。ほかにも「ドロモア城の食器棚」、「ドロモア城の書きもの机」など、アングロ=ジャパニーズ様式の調度品も展示されていました。また、ロイヤル・ウースター社の「吉兆文カップ&ソーサー」や、ミントン社の「日本文物文皿」など、ジャポニズムの影響が色濃く残る作品が同時に展示されていたことで、ビアズリーの作品への理解が深まりました。

エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけたコーヒー・テーブル
エドワード・ウィリアム・ゴドウィン作「ドロモア城の書きもの机」
ミントン社「日本文物文皿」

以前紹介したゴッホの椅子もそうですが、アートと家具は互いに影響しあっていると感じます。装飾としての役割や空間の美学に共通点があるのかもしれません。

ビアズリーの絵に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。そして、原田マハさんの「サロメ」は、アートに興味がない方でも楽しめる傑作。気軽に読んでみてほしい一冊です。

<参考>
『芸術新潮』2025年2月号、新潮社
『ビアズリー展』図録(東京:三菱一号館美術館、2025年)、青幻舎

※画像すべて「ビアズリー展」にて筆者が撮影

国産ヒノキのタイニーハウス「コダマベース」を勝手にランキング!

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私は今、車の中でこの原稿を書いています。 家の敷地内の駐車場に止めた車の中で(笑)。

「家の中でやればいいじゃん!」と思いますよね? しかし、暖かくなってきたこの季節、部屋の中より外のほうが断然心地よく、原稿仕事もはかどるんです。

自宅の駐車場ならWi-Fiもつながりますし、何より個室感があって集中できる! よくカフェで仕事をする方を見かけますが、私は無理。隣の人の会話や、誰が何を注文したのか気になってしまうんです。

そんな話はさておき、今回ご紹介するのは、車一台分の駐車場スペースがあれば設置できるタイニーハウス「コダマベース」です。

 

「コダマベース」とは?

「コダマベース」は、国内の針葉樹を有効活用しながら、人の心にも体にも優しく、使い勝手の良い小屋を作ろう! というコンセプトのもと誕生しました。

タイニーハウスが日本で注目され始めた2018年頃から、私はさまざまな会社が手がけるタイニーハウスを取材してきました。その中でも、「コダマベース」は特に細部へのこだわりが行き届いていると感じました。

そこで今回は、私の“勝手にランキング”形式で「コダマベース」の魅力をお伝えします!

インスタはこちらhttps://www.instagram.com/s/aGlnaGxpZ2h0OjE3ODUwNzY0ODc2NTk3Njg1?igsh=dmZmNTF4bGtmcGMw

 


◆ 1位:ライティングレールが標準装備

スポットライトやペンダントライトなど好きな照明を取り付けられるのがいいなと思いました。照明をどこにいくつ設置するかで、好みの空間が作れそうですよね。

◆2位:ベンチにもなる窓枠

これはもうデザインの勝利!

「コダマベース」には大きな窓と小さな窓が付いています。大きいほうの窓枠は30センチほどの奥行があって、ここがベンチとして使えるのです! 外の景色を眺めながらコーヒーを飲むとか、ゆったり読書をするとか、日向ぼっことか・・・。そんなシーンを想像して、これはいいぞ!と思いました。

ペアガラスになっていて、窓を閉めれば外の音が気にならないうえ、外気の影響を受けにくいという造りになっています。オリジナルで網戸がついているのもいいなぁと思います。

しかも、窓はペアガラス仕様で、断熱性が高く外の音も気になりません。オリジナルの網戸付きで、開ければ風通しも良好です。

ちなみに小さいほうの窓は、ペアガラスの扉と内開きの網戸。風が通りやすくなるので空気の循環ができます。

 

◆3位:DIYもできる頑丈な壁

「コダマベース」の内装は国産材の東濃ヒノキ。床材もヒノキの無垢。壁はヒノキの積層合板でできています。厚さが12mmあるのでどこでもネジが効くのがいいですね。

ハンモックや収納用の棚を付けたりもできるし、ギターハンガーをつけて楽器を収納しながら飾るとか、いろいろ考えるのが楽しくなりそう。壁の強度があるからできることだなと思います。

自分好みにカスタマイズできるのが楽しいポイントです。

◆4位:真鍮のスイッチプレート

これ、入って真っ先に気になりました。スイッチのプレートが真鍮製なんです!オプションかなと思ったら、標準装備。アンティークな雰囲気が好きな私にはたまらない!

空気に触れたり手の油に反応したりして、独特の深みを増していく真鍮。細かいところだけれど、スイッチは毎回目に触れるところ。こだわりが光っているなと感じました。

 

ちなみに、コンセントは室内に3カ所つけることが可能。好きなところにつけられるというのも、好きな位置に取り付けられるのも自由度が高くて◎。

 

◆5位:ヒノキの香り

「コダマベース」のなかは、とにかく気持ちがいい!

ドアや内装などヒノキの無垢材が使われているから、ヒノキの香りに包まれるんです。森にはいったときみたいに深呼吸したくなる気持ち。鎮静作用があるヒノキの香りと質感、手触りなど、リラックスできます。


5位まで挙げてみました。デフォルトでもけっこう満足な内容だと思いますがいかがでしたでしょうか。

デフォルトでも満足度の高い「コダマベース」ですが、オプションでウッドデッキやロフトを追加することも可能。

こんな快適な空間なら、仕事もますますはかどりそうだな〜と、車の中で原稿を書きながら改めて感じたのでした。

こんな風にカスタマイズしてお店にしちゃった人もいます。アレンジ次第で最高の空間がつくれそう

 

【参考】

コダマベース https://kodama-p.com/category/item/architecture/

YouTube

桜が咲かない未来がやってくる!? 桜の開花に異変

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桜シーズン到来!
前に「春の使者・桜。木材としても優秀な桜についてのお話」でも書きましたが、桜は高級家具などに使用される素材としても重宝されている木材。流通量が少ないため、貴重な材です。木材となったあとも、ほんのりと桜の香りが漂うというからなんとも風流ですよね。

さて、今回はそんな桜に異変が起きているというお話。

このままいくと将来桜が咲かなくなってしまうという研究結果もあり、お花見を待ち遠しく思っている人にとっては危機的状況が来ているのです。

 

◆お花見の起源

詳しい話の前に、お花見の由来についても調べてみたのでそちらを先に紹介しますね。

日本でお花見が定着したのはいつごろか—。

もともとは奈良時代に梅の花を観賞していたことに由来しているといわれています。平安時代になると梅から桜へと変わり、桜を愛でるのがお花見の主流となったようです。

平安時代の歌集「古今和歌集」には桜を詠んだ歌がたくさん残されていることから、当時の人たちも今の私たちのように桜に心惹かれていたことが伝わってきます。

当時、お花見は貴族のたしなみ。桜を見ながら華やかな宴会を開いたり歌を詠んだり蹴鞠(けまり)をしたりというのがお花見のスタイルだったようです。

鎌倉時代になると、武士の間でもお花見が浸透。安土桃山時代になると、豊臣秀吉が奈良や京都で盛大な花見を催したことが知られています。江戸時代になるとお花見は庶民の文化として定着。今のように桜の木の下に集まってワイワイみんなで楽しむという春の行事となっていったそうです。

 

◆開花時期は40年で約1週間早まっている

お花見は古くから春の風物詩として親しまれてきた行事なんですね。

それにしても、最近は桜の開花時期がだいぶ早まっているような気がしますよね。ニュースなどでも取り上げられていますが、記録によると桜の開花時期はこの40年で約1週間も早まっているそうです。

なぜ、そんなに早まっているのか。その理由は桜が咲く仕組みと気温が大きく関わっているからなんです。

桜の花になる花芽は、前年の夏につくられ、秋から冬にかけて寒い冬を越すために休眠します。その後、厳しい寒さにさらされることで休眠から目覚め(これを「休眠打破」といいます)、開花に向けての成長が再開。最高気温が一定の値に達したところで開花します。気温が高いほど開花が早まるというのは、このような仕組みだからなんですね。

4月1日時点での開花ラインの変化を見ると、開花時期が早まっていることがよくわかりますね。2021年の東京は2年連続で過去最速の3月14に開花宣言が出されました。さらに全国の半数にあたる28地点で開花日が観測史上最早を記録しています。

出典:環境省「デコ活」

 

1960年代から比べると3月の最高気温の平均も年々上がっています。それに伴って桜の開花日の平均は短くなっているのがわかります。

出典:環境省「デコ活」

 

一定期間低温にさらされることで花芽が目覚める「休眠打破」が、開花の必須条件。温暖化によって、冷え込みが足りず、花芽の発育が早まることで開花時期は早まってしまうということなんです。また、研究によると低温期間が充分でないために休眠打破が行われず、桜が開花しない地域もでると予想されています。

 

◆最速の桜開花は異常気象のひとつ

近年、世界各地で異常気象が観測されていますが「観測史上最も早い桜」というのも、異常気象の1つともいえるのではないでしょうか。

「春には桜が咲く」という日本人が当たり前に享受してきた四季の美しさ。子どもたちが大人になるころには、もしかしたら見られなくなってしまうことがあるかもしれません。美しい桜をいつまでも愛でることができる日本でありますように。私たちにできることをしなくては、と思ったのでした。

【参考】

農林水産省「日本の桜の歴史」

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2303/spe1_02.html

 

農林水産省「お花見の歴史とお花見弁当」

https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/wagohan/articles/2303/spe15_02.html

 

環境省「デコ活」

https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/weather/article06.html?utm_source=chatgpt.com

 

桃の節句:「驚き、桃の木、山椒の木」ってなんだっけ?

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT

3月といえば桃の節句。

ふと「桃の木ってどんな感じだっけ?」と思った瞬間、頭の中で「驚き、桃の木、山椒の木」という言葉がよぎりました。今ではあまり耳にしなくなったこのフレーズ、一体どこから来たのでしょうか?

「驚き、桃の木、山椒の木」は、「とても驚いた」という意味の言葉遊びです。語呂の良さが特徴的で、一説によると昭和の名作映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんのセリフとして広まったと言われています。また、人気アニメ『タイムボカンシリーズ』では「驚き桃の木山椒の木、ブリキにタヌキに洗濯機…」と続く形で使われていたようです。

こうした言葉遊びは「地口(じぐち)」といわれています。地口は、主に江戸時代に庶民の間で広まった言葉遊びの一種で、日常の言葉やことわざをもじったり、音を似せたりして作られるダジャレのようなものです。

「驚き、桃の木、山椒の木」も、こうした地口の流れを汲むフレーズのひとつ。言葉の響きやリズムの楽しさがありますよね。

さて、話を桃の木に戻しますね。

 

桃の木とは

桃の木はバラ科モモ属の落葉樹で、原産は中国。日本では弥生時代の遺跡から桃の種が見つかっており、古事記や日本書紀にも桃に関する記述があることから、古くから親しまれてきたことがわかります。

現在、日本で栽培されている桃の多くは、中国や欧米から入ってきた品種を日本の気候に合うように改良したものです。主要な生産地は山梨県と福島県の2県がトップで、長野県、山形県、和歌山県を含む5県で全国の約8割の桃が生産されています(令和5年度農林水産省調べ)。

 

桃の木の新たな活用法

桃の木は通常20〜30年で植え替えの時期を迎えます。これまで伐採された木は廃棄されるのが一般的でしたが、日本一の桃の生産量を誇る山梨県笛吹市では、これらの桃の木を再利用する取り組みが始まっています。

提供:ムラコシ精工

 

2024年にスタートした「桃の木プロジェクト」は、地元で住宅部品の製造を行う老舗メーカー・株式会社ムラコシ精工が運営。長年培った技術力を生かし、地域の課題解決に挑戦しています。

提供:ムラコシ精工

 

プロジェクトから生まれた「桃の木ドアレバー」は2024年ウッドデザイン賞を受賞。硬く引き締まった性質を持つ桃の木。優しい色合いや手触りが特徴で、どんなインテリアにも馴染みやすいのが魅力です。

提供:ムラコシ精工

 

桃の木の美しさや果実の味わいを楽しむだけでなく、資源としての可能性を広げることで、より持続可能な未来へとつながる。そんな取り組みに今後も注目したいですね。

 

【参考】

桃の木プロジェクト

https://www.murakoshiseikou.com/torikumi/momonokipj/

Instagram

https://www.murakoshiseikou.com/torikumi/momonokipj/

森林レンタルサービス「forenta」—好きなとき好きなだけいられる自分だけの森

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIY憧れのライフスタイル木育

1年間、森の一角を貸してくれる、と言われたら何をしますか?

  • テントを張る。
  • ウッドデッキや簡単なシェルター作る。
  • 薪置き場や焚火スペースを作り、いつでも焚火ができるようにする。
  • 石やレンガでピザ窯を作る。
  • スモークハウスを作って燻製に挑戦する。

など、やりたいことはたくさん出てきますよね。

私の場合、森で一番やってみたいことは「ぼーっとする」かもしれません(笑)。何もしないというのも最高の贅沢ですよね。

自分専用の森をレンタルできるサービス

自然に浸りたいな~というとき、一番手っ取り早いのはキャンプに行くことかなと思うのですが、昨今のブームも相まって、人気のキャンプ場は予約がなかなかとりづらい状態が続いています。

コロナ禍を経てキャンプ場の数も増えたようですが、キャンプ場によっては隣の区画との距離が近すぎて話している内容が聞こえてしまったり、子ども同士がもめたりなんていうこともあって、リラックスしに行ったはずが、ただ疲れて帰ってきたなんていうこともあると聞きます。

そんななか、岐阜県で2020年にスタートした「forenta」という森林レンタルサービスが注目を集めています。自分だけの森を年間契約で借りられるサービスで、予約なしでいつでも好きなときに訪れることができるというもの。まるで自分の秘密基地を持つような感覚で利用できるとあって、キャンパーを中心に人気が高まっています。

「forenta」利用者の区画。(提供:forenta)

サービスが始まった背景には、日本の林業が抱えるさまざまな問題があったといいます。

高齢化が進み、森の手入れが追いつかなくなったり、木材生産だけでは経営が成り立たなかったりと、全国の山主たちは苦しい状況に立たされています。山間地域の過疎化も深刻で、人の出入りが減ることで森はますます荒れていく。こうした課題を解決するために生まれたのが「forenta」なのです。

年間いつでも行けるから四季の移ろいも楽しめる(提供:forenta)

借りる人、貸す人、そして自然。三者すべてにプラスになる仕組み

「forenta」の魅力は、自然そのままを自由に使えるという点。なので、山のオーナーは初期投資不要で森を貸し、手間をかけずに収益を得られるというメリットがあります。一方、利用者は、自分で好きなように森を整備しながら使えるため、“森のオーナー”になったような気分を味わえます。

利用者が自分の区画として森を使うことは、自然にとってもメリットがあります。今、戦後に植えられた人工林は、手入れがされずに放置されるケースが増えていて、各地で問題になっています。人工林は人の手が入らなくなるとどんどん荒れてしまう。でも、「forenta」を通じて人が森に入り、適度に活用することで、森林が健全に保たれていくことが期待されれているのです。

 

「forenta」利用者の区画。(提供:forenta)

自由度が高い「forenta」

年間契約だから、思い立ったときにすぐ森へ行けるのが「forenta」の大きな特長。焚火はもちろんOKで、小さな木なら伐採も可能。キノコや果実を採ることもできます。静岡県伊東市の宇佐美キャンプエリアでは、区画内に実ったみかんが好きなだけ食べられるとか。さらに、自分の区画なのでテントを張ったまま帰っても問題ない。広い区画が確保されているので、他の利用者の音が気になることもほとんどないそうです。

区画内に実った果物やキノコは収穫OK。四季の食材を見つけに行くのも楽しみになりそうです(提供:forenta))

比較的平坦で車で乗り入れやすい土地が選ばれていたり、アクセスのしやすさも考慮されています。ただし、森の中はほぼ手つかずの自然なので、自分で開拓するワイルドなキャンプを楽しみたい人、という条件は踏まえておいたほうがいいかもしれません。

近くの沢から水をひく水路を自作する人も!「forenta」利用者の区画。(提供:forenta)

一時期のキャンプブームにのり、山を買うという人も多いと聞きます。

ただ、山を買うとなると、登記手続きや固定資産税、森林組合費、伐採の管理など、いろいろと手間がかかりますよね。買った後の管理は、想像しているよりも大変という声もあるといいます。でも、「forenta」ならレンタルなので、そうした負担は一切なし。1年ごとに契約を更新することで、長期の利用も可能です。

利用者の中にはログハウスを建てたり、露天風呂やミニガーデンを作ったりと、みなさん思い思いの使い方で自分だけの森を楽しんでいるようです。

「forenta」利用者の区画。(提供:forenta)

「forenta」は、森を活用しながら自然と共存し、地域の課題解決にも貢献するサービス。ありそうでなかった画期的なアイデアが評価されて、「2022年度グッドデザイン賞」「ウッドデザイン賞2022」をW受賞。今では北海道、静岡、京都、福岡と全国に広がりを見せています。単なるレンタルサービスではなく、森と人をつなぐ新しい仕組みとして、これからさらに広がっていきそうですね。

 

【参考】

forenta

https://www.forenta.net/

「forenta」Instagram

https://www.instagram.com/forenta1/