台風シーズンまっただなか。気象庁によると8月に発生した台風は10個。9月も引き続き台風が多い月になるので、気になるところですね。
ところで、こうした台風などによって倒れた街路樹を「楽器」として生まれ変わらせる取り組みがアメリカ・カリフォルニア州で広がっているのを知っていますか? 今回は、そんな取組みの背景にスポットを当ててみようと思います。

街路樹はなぜ「捨てられる」のか
街路樹は台風被害や病気、根の張りすぎによる歩道の破損などを理由に、日常的に伐採されています。
行政や樹木管理業者にとって、伐採後の木材処分はコストと手間のかかる課題です。焼却や埋め立てにまわされる木材も少なくありません。
伐採した木を使う「Street Tree Revival」

この課題に向き合ったのが、カリフォルニア州の樹木管理会社 West Coast Arborists(WCA)です。同社はカリフォルニア州森林局(CAL FIRE)と協力し、「Street Tree Revival」という都市木材リサイクルプログラムを立ち上げました。
仕組みはシンプルです。
- 各都市から「この木を伐採予定」という情報が入る
- 使えそうな樹種・サイズであれば、廃棄せず丸太のまま集積場へ運ぶ
- 家具メーカーや木工職人、楽器メーカーに製材前の丸太として販売する
- 使えない部分はチップ・マルチ材として再利用する

WCAは木を伐るだけでなく、毎年1万8千〜2万本もの木を新たに植えて、新しいサイクルを生み出すことも設計しています。
TaylorやFenderが注目した理由
さて、ギターの話。
サウンドの良い木、というと従来はスプルースやマホガニー、ローズウッドなどの木材が定番でした。しかし牧畜・農業目的の森林破壊によって、これらの木材の入手は年々難しくなっています。

こうした状況の中、Taylor GuitarsやFenderといった大手ギターメーカーが街路樹に活路を見出しました。Taylorは街路樹の中から「シャメルアッシュ」など楽器に適した樹種を見つけ出し、「Urban Ash」シリーズとして製品化。Fenderも2023年にStreet Tree Revivalと組んだ一点物コレクションを発表するなど、街の木を楽器材として扱う動きが業界内でも広がりつつあります。
静かに広がる日本での取組み
カリフォルニアほど華やかな完成品の物語はまだ少ないものの、日本国内でも街路樹の伐採材を活かす取り組みは静かに広がっています。
- 町田市:道路管理で伐採した街路樹の幹をストックし、木質バイオマス燃料や家具・雑貨に加工。「廃棄」ではなく「利用」する方針を掲げ、街路樹を使った木育活動にも力を入れています。2023年度には伐採したケヤキで積み木を1000ピース製作し、市内の保育園へ配布しました。

- 静岡市:市内の木材加工会社きんぱらと協力し、枯れたり腐ったりして伐採されたプラタナスや桜など約160本の利活用を目指す社会実験を実施。チップ処分だと1トンあたり約1万円かかる処分費用の削減も狙いです。
- 東京都「とうきょうの木のすゝめ」:街の木は生育条件が悪く伐られやすい一方、奥山の天然林でも珍しいような大木が眠っていることがあり、都市は”隠れた木材資源”だという視点で街路樹由来の木工品を紹介しています。
現時点では、まだバイオマス燃料や積み木、家具素材に再利用という段階ですが、用途の幅はこれから広がっていきそうです。
「古い木」だからこその強さ
再生木材が選ばれる理由は、見た目の味わいだけではありません。
長年風雨や環境の変化にさらされてきた木材は、伐りたての新材に比べてすでに水分や内部応力が落ち着いており、反りや収縮、湿気による伸縮といった動きが起きにくくなっています。

木目が締まり、質感も増していくため、寸法の安定性が求められる建築部材や床材などの用途とも相性が良いとされています。
WCAによると、街路樹由来の木材が家具や楽器に使うメリットはこの「時間を経た木の落ち着き」だ、ということです。
再生でリンクする「rewood」
この考え方は、これまで何度か紹介してきた再生家具「rewood(リウッド)」の取り組みとも重なります。rewoodは、家庭で使われなくなった一枚板の座敷机などを全国から買い取り、乾燥・再仕上げを施して新たな一枚板テーブルなどに再生するブランド。必要以上の森林伐採を減らし、資源を循環させる取り組みとして2022年度グッドデザイン賞を受賞しています。

何十年も家庭で使われ、時を重ねてきた一枚板だからこそ出せる風合いと安定感は、街路樹を再生するカリフォルニアの事例とも通じる「木を活かしきる」姿勢と言えるでしょう。

rewood https://re-wood.jp/
【関連記事】
再生材は新しいストーリーを生み出す
この事例から見えてくるのは、「木を無駄にしない」という発想が、コスト削減や環境配慮にとどまらず、新しい表現やストーリーを生み出す力になるということです。
- 樹種にこだわらず、木そのものの個性(木目・香り・出自)を活かす発想
- 「捨てられるはずだった木」というストーリーが付加価値になる
- 地域の木材(国産材・地域材)にも同じ可能性がある

探っていくとキトヒトにも重なるところがあるテーマ。国産の街路樹・剪定材を使った家具や小物づくりの事例を、引き続き調べてみたいなと思います。
<参考>
- WCA「Street Tree Revival」
- Taylor Guitars公式ブログ「Making Taylor Guitars with Urban Ash」
- カリフォルニア都市森林協議会「A Tree’s Second Life with Taylor Guitars」
- 町田市:街路樹発生材の利活用への取り組み























































































