脱炭素社会の実現に貢献。木造高層ビルが続々と誕生予定

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTrecommend憧れのライフスタイル

最近、オフィスビルが次々と木造化されるというニュースをよく聞きます。

有名なところだと、東京海上日動ビル本館・新館の建て替え。国産木材をふんだんに使用した新オフィスが2028年の竣工の予定です。完成すれば、木の使用料が世界最大規模となる高さ100メートルの「木の本店ビル」となります。

三井不動産と竹中工務店が手がける、仮称・日本橋本町木造計画(むろまち小路)は、「日本橋に森をつくる」をコンセプトにした国内最大規模の木造賃貸オフィスビル。2026~27年に竣工予定だそうです。ほかにも、環境配慮型の木質耐火部材を日本で初めて採用したオフィスビルが秋葉原にできるとか。

都市の木造化が進んでいるのを実感しますね。

イメージ

 

■進化した技術と木材

 

建築の技術革新ってすごいですよね。高層ビルを鉄筋コンクリートではなく木造で建てることができるなんて!

木造化が進んでいる理由として、耐震性や耐火性、断熱性に優れた木材が開発されたことが大きいようです。これまでの木造技術では強度に不安があったため、高層ビルを建てることが難しいという現状がありました。建物が密集する都市部では、防火規制も厳しいため木材を柱や梁として使用することが難しかったことも原因としてあげられています。

イメージ

 

それが、ここ数年で飛躍的に進化!耐火、耐震、断熱効果に優れたCLTという木材が普及したことで、木造中高層ビルが実現できるようになったのです。

今では、オフィスビルだけでなくマンションや学校の校舎にも進化した木材と木造技術が用いられるようになっています。

構造躯体として建物を支えると共に、断熱性や遮炎性、遮熱性、遮音性などの複合的な効果も期待できる木材「CLT」(画像提供:一般社団法人日本CLT協会)

 

■大量の木材を使うことで脱炭素社会の実現へ

 

木造化のもう1つの理由は、脱炭素社会への意識が高まったこと。

2050年までに温室効果ガスの排出をトータルしてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指す、と宣言している日本。二酸化炭素を吸収する森林を健康に保てるかどうかが、目標を達成するための鍵になってくるのです。

高層ビルの木造化には、当然大量の木を使います。となると、国内の森林資源は有効活用され、森を支える地域の経済が潤うわけで。その結果、適切に管理できるようになり森は健康を取り戻し、脱炭素社会の実現にも近づくことができるのです。

そしてもう1つの理由は法整備が進んだこと。

2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され、国をあげて木材利用の促進に取り組んできました。

2021年には「「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」に改名されて、対象を公共建築物から建築物一般に拡大されました。

こうした背景から、木造建造物が増えているんですね。

イメージ

***************

私たちの身近なところでも木造建造物が増えていたり、オフィスを木質化するという動きも活発になってきています。

次回、そのあたりも掘り下げてみようと思います。

 

 

 

<関連記事>

マンションも木造の時代!木造中高層マンションが増えている

https://00m.in/aetCX

 

 

子どもと林業体験「コダマフォレストキャラバン」始まります!

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT憧れのライフスタイル木育

■森林を守るための間伐を体験

先日開催された森林体験イベント「コダマフォレストキャラバン」。岐阜県加茂郡にある東白川村の立派なヒノキやスギが並ぶ森の一角で、生まれて初めての間伐体験をしてきました!

間伐とは、過密にならないように森の木を間引くこと。今回は、直径10センチほどに育ったヒノキを、子どもを含めた参加者全員で伐っていきます。

まずは、フォレストキャラバン隊長が木の倒れる方向を見定めて幹に切り口“受け口”を作ります。そして、“受け口”の反対側から参加者が交代で刃を入れていきます。

細い木ながら、作業をしてみるといつ倒れるのかわからないので、なかなかエキサイティング! 「わ~!倒れるよ~!」と口々にはしゃぎ、倒れた瞬間には拍手が起こりました。

伐ったばかりの木は、イキイキとしていて瑞々しいことに驚き! 地中の水を吸い上げて成長しているんだな~と(当たり前のことですが…)しみじみ。あたり一面に漂う香りと、太陽に照らされてピンクに透き通るヒノキに感動したのでした。

間伐した木材はみんなで輪切りにして持ち帰ります。記念にそのまま置いておくもよし、加工して何かを作るのもいいですよね。

 

■間伐材を使った工作体験で森と遊ぶ

「コダマフォレストキャラバン」の最後のプログラムではヒノキの間伐材を使った工作に挑戦!あらかじめ用意された木材を、スマホスタンドやペン立て、小物入れに仕上げていきます。

ドリルを使ってペンを立てるための穴を開けたり、サンドペーパーで表面を磨き揚げたり、みんな思い思いの作品に仕上げるため、真剣な表情。口数が少なくなり(笑)、みんな黙々と作業に没頭していました。

表面がゴツゴツしていたり、穴が開いていたり、木目がそれぞれに違ったりと、木にも個性があります。手でふれることで木温かみを感じられて充実した時間を過ごせた気がします。

 

■未来のために知っておこう。間伐の基礎知識

間伐とは、森を健全に守るために必要な作業。実は私たちの生活にも密接に関わっているんです。一番わかりやすいのは土砂災害でしょうか。

間伐しないと森はどうなるのか—。密集した木はしっかりとした根を張ることができずに痩せていきます。生い茂った木のせいで、太陽の光が地面に届かず、地面にはえるシダなどの草木も根を張ることができません。そのため、土も痩せていきます。こうなると、表面の土が流出しやすくなり、水を貯えるという森林の機能が失われていきます。そして大雨が降ったとき、一気に斜面ごと崩れてしまうのです。

林野庁HPより

 

最近では、異常気象が頻発していて各地で大雨の被害も発生しています。林業の衰退とともに森の手入れが行き届かず、適切な間伐がされていないというのが大きな原因とされています。

でも、根本は私たちの無関心によるものなのかもしれないな~と思ったりもします。

森林大国とよばれる日本。たくさんの森の恵みにあやかって生活しています。山の近くに暮らす人だけでなく、都会で暮らす人たちも、みんなで森を健康に保つためにできることをしていきたいですよね。森の未来は私たちの未来。間伐体験やワークショップを通して、少しでも多くの人が森を身近に感じることができたらいいなと思いました。

***************

子どもと森林体験ができる「コダマフォレストキャラバン」は2025年3月より始動します。親子で参加して森のこと、暮らしのこと、楽しく体験できる日帰りイベント。おいしい山の幸も堪能できます! 次回は「食」のこともレポートしてみようかかなと思っています。

興味がわいてきた!という方は下記のバナーよりチェックしてみてくださいね!

 

【参考】

林野庁HP

https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/suisin/kanbatu.html

 

コダマフォレストキャラバン2025開催決定!

 

“森のリトリート”を体験。岐阜県の小さな村・東白川村のリトリートとは

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTrecommend憧れのライフスタイル木育

くねくねとした山あいの道。車の窓を開けると、風とともに森の香りが広がります。川沿いを山の奥へと進んだ先にあるのが岐阜県で一番小さな村「加茂郡東白川村」です。標高1,000m級の山に囲まれた村には東西にかけて白川が流れ、周辺に集落が点在しています。

前日に大雨が降ったせいか、この日は早朝から霧がかった風景が広がり、緑を覆うヴェールのように幻想的な雰囲気が漂っていました。

美しい森が広がる東白川村。今日はここで“森のリトリート”を体験します。

 

■リトリートとは

最近よく聞くワード「リトリート」。

日常生活から離れて心身をリラックスさせる時間の使い方のことをいいます。本来の「retreat」には、避難、避難所、隠居所、静養所 〔軍隊などが〕撤退、退却すること、という意味もあります。

忙しい毎日から一歩下がって、静かな場所で自分を向きあう、そんな意味もこめられた言葉です。

メンタルヘルスの分野で重要とされている

・Rest(休息)

・Recreation(遊びや娯楽)

・Relaxation(リラクゼーション)

・Retreatment(再治療)

という4Rを満たすものとして、注目されています。

 

■森の空気と同調する心地よさ

 

森に一歩足を踏み入れると、空気が変わるのを感じることができました。

 

まずは全身で大きく深呼吸。

ぼんやりとカメラのピントをぼかす感じで森全体を眺めるように視野を広げます。森全体を視野に入れながら、今度は自分の心がピンとくる場所を見つけます。ふわ~っと森を眺めていると、「ここかな」という場所にフォーカスがあたるから不思議です。

“自分の場所” を見つけたら、その場所でしばらく森と呼吸を合わせるように深く大きく深呼吸を繰り返していきます。

何も考えず、ただぼ~っと森に心身をゆだねます。

 

すると小鳥たちのさえずり、草のこすれる音、小川のせせらぎがだんだんと大きく聞こえるようになって、自分も森の一部になったような気持ちに。樹々の呼吸と自分の呼吸がだんだん同調していくような気がして、気がつくとほわ~っと心地よい気分に満たされていました。

 

■DNAレベルで安心する森の効果

マイナスイオンやフィトンチッドの作用により、森林浴にリラックス効果があるということは以前もこのブログで紹介してきました。それを身をもって感じられた“森のリトリート”体験。ちょっとスピリチュアルな感じがして敬遠しがちな人もいるかもしれませんが、森林浴効果はちゃんと科学的にも立証されています。

興味がある方はこちらの記事を読んでみてください。森林浴の研究をしている千葉大学環境健康フィールド科学センター自然セラピー研究室名誉教授・医学博士の宮崎良文教授と池井晴美准教授のインタビューです。


政府広報オンライン

VOL.192 MAY 2024
JAPAN’S HEALING FORESTS (PART 1)人はなぜ、森へ行くとリラックスするのか。」


 

太古の昔から人類の歩みは自然とともにありました。森から食べ物や水を得て命をつないできたのが人間です。自然の中にいることが、人間にとっては“自然なこと”。都会暮らしをしていても、DNAレベルでは自然に回帰することを求めている、ということなのでしょう。

まちの喧騒から逃れて森のなかでリラックスすることは、もともと持っていた人間本来の力を取り戻すことにもつながるのかもしれません。

“森のリトリート”を体験したことで、忙しい暮らしに戻ってきても、森でのあの時間を思い出すと気持ちがリラックスします。

意識的に時間を作って心と身体を整えるのは、まちに住む私たちにとって必要なのものだと実感しました。

****************

今回の“森のリトリート”は、「コダマフォレストキャラバン」の一環として開催されたもの。リトリート以外にも間伐体験や製材工場の見学、木工ワークショップなど、1日みっちり森を体験できるプログラムが盛りだくさんでした。次の回でも引き続き、「コダマフォレストキャラバン」について紹介していこうと思います。

【参考】

コダマフォレストキャラバン

コダマフォレストキャラバン2025開催決定!

 

名古屋発。座敷机を再利用した小皿「COM-PLATES」。ニューヨークのセレブ店にも

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIY憧れのライフスタイル

手触りの良いハート型の小皿「COM-PLATES(コンプレート)」。計算しつくされたフォルムは、並べると花やクローバーの形が作れるというデザイン的にも優れた作品に仕上がっています。

実はこれ、座敷机の脚を再利用したものなんです。

タガヤサン、ブビンガ材などでできた「COM-PLATEⅠ」

 

◆金型技術を応用して木工制作

制作するのは、名古屋市天白区の高信金型製作所の代表・高橋広史さん。金属を加工してプラスチック製品の金型を作る技術を利用し、廃棄木材を使った製品作りに挑戦しています。

高信金型製作所の高橋広史さん

 

「2023年に『CONNECT』を運営する家具店の水野社長から、使われなくなった座卓をどうにか活用できないかという相談を受けて、木工制作を試してみることになりました。水野さんからの声かけがなければ、COM-PLATESは生まれなかったでしょうね」

と、振り返る高橋さん。

「CONNECT」では廃棄される座敷机を循環させるため、「rewood」というブランドを立ち上げていましたが、当時利用されていたのは天板のみ。廃棄される脚も活用したいという水野さんの想いに応え、高橋さんの挑戦が始まったといいます。

「rewood」でレスキューされた座卓の脚を「COM-PLATES」としてアップサイクル(画像提供:HN-WORKS)

 

◆わずか1.5mmに仕上げる技術力

「COM-PLATES」の最大の魅力はその薄さ。わずか1.5mmの厚みに仕上げられたプレートは、「世界最薄」と高橋さんはいいます。

「COM-PLATES」シリーズは、ファーストモデルの「COM-PLATESⅠ」のほかに、天板の端材を利用した深皿タイプの「COM-PLATESⅡ」、さらにⅡのミニサイズ「COM-PLATESⅢ」の3種類。木材は薄くスライスすると反りや割れがおきてしまうのに、これだけ薄く仕上げられるのは金型製作の技術があるからこそ。

「木工製品ではまず考えられない薄さだと思います。初めて目にした人はみんな驚きます(笑)」と高橋さん。

私も、驚いた一人です(笑)。本当に薄い。そして当たり前ですが、軽い。どうやってこの薄さを実現しているのでしょう。

最厚部2mm、最薄部1.5mmという驚異の薄さ(画像提供:HN-WORKS)

 

高橋さんが見せてくれたのは、ゴロンとした分厚い脚。これをまず7mmに切り出した後、金型に設置した状態でプレートの形状に削り出します。ここが金型加工で培った技術が光るところ。

左上が座卓の脚。それを小さくカットして加工していきます

 

プレートの形に切り出したら手作業でやすりがけをして整えます。表面処理として種類の違うコーティング剤を合計4回にわたって塗布していくのだそう。1枚を仕上げるのに「 COM-PLATES Ⅰ 」は6時間、「COM-PLATES Ⅱ」 は15時間、「 COM-PLATES Ⅲ 」は8時間かかると聞き、高橋さんの職人魂を感じました。

金属加工の機械を使って木材をプレートの形に切り出します

 

陶器やガラスに比べて木材は水に弱いイメージがありますが、実際はどうなのでしょう。

「カリン材で作った『COM-PLATES』を24時間水につけてみたんです。そうすると、やっぱり3mmほど反るんですよね。でも、日光にあてて乾かしてみたら元通りになったんです」

この実験から、水洗いにも十分耐えられるということがわかったと高橋さんは話します。

 

美しい虎杢が出たトチ材。一枚ずつ美しい木目が出ている点も「COM-PLATES」の特筆すべき魅力です

 

◆著名人が通うニューヨークのセレブ店にも納品

「COM-PLATESⅠ」は、2023年には「ウッドデザイン賞」を受賞。さらに、つい先日は世界中のデザイナーが出品する「DFAアジアデザインアワード香港2024」にて銅賞を受賞するなど、各地で評価されています。

内側と外側のカーブを同じ値にし、連ねて並べる楽しさも実現。アート的観点でも注目が集まります(画像提供:HN-WORKS)

 

さらに、ニューヨークのセントラルパークにあるレストラン「TAVERN ON THE GREEN(タバーン・オン・ザ・グリーン)」からもオーダーが入ったのだとか。

「タバーン・オン・ザ・グリーン」といえば、マイケルジャクソンやマドンナのパーティ会場として選ばれ、ジョン・レノンも通っていたというセレブ御用達の店。

「COM-PLATES」の背景にあるストーリーも、セレブたちには興味深いものに映るかもしれませんよね。座敷机という日本独自の文化、木材の希少性や、サステナビリティ、デザイン、機能美など、さまざまな角度から興味をもってもらえそうです。

 

「COM-PLATESⅠ」は40枚重ねてもたったの85mm。コンパクトに収納できるのも魅力です

「COM-PLATES」シリーズは、どのタイプもカーブが同じ角度に設計されているため、重ねても並べても絵になるプレートに仕上がっています。パーティなど、さまざまなシーンで活躍してくれそうですね。

自由に並べてテーブルを華やかに演出

 

◆パソコンを木質化?木工の新しい可能性を追求

建材業界からは床材の端材を加工してほしいとの依頼や、興味をもった企業からの引き合いもあるとか。

さらに今後は、ノートパソコンを木質化することにチャレンジしたいと話す高橋さん。

「木のカバーっていうものじゃなくて、パソコンの筐体そのものを木で作れないかなと思って考案中です。アイデアはたくさん出てくるんですよ。今までなかったような新しい木工というものを作っていきたいです」と話していました。

いったいどんなものができるのか、楽しみですね。

「COM-PLATESⅠ」は国産木材の利用推進をすすめる林野庁のショーケースにも展示されています(画像提供:HN-WORKS)

 

「COM-PLATES」https://hnworks.thebase.in

 

【取材協力】

高信金型製作所≪HN-WORKS≫

https://hnworks.wixsite.com/hn-works

【参考】

rewood

https://re-wood.jp/

 

家具のトレンドは有機的デザイン。暮らしのなかにインスピレーションと癒しを

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIY天然素材 木のテーブル

ここ数年のインテリアのトレンドは「有機的なデザイン」。自然界のもの、例えば植物などにインスピレーションを受けた曲線的なデザインが人気となっています。

イメージ

◆丸みがあって素材感重視の「有機的デザイン」

 

毎年4月にイタリアで開催される家具の祭典「ミラノサローネ」。

会場では曲木加工された天然木のテーブルセットや、丸みを帯びたデザインのソファが注目を集めていたのだとか。曲木のカーブや丸いフォルムなど、柔らかさがあるデザインが最新のトレンド。素材感も重視されていて、タオル素材やコーデュロイなど思わず触れてみたくなるようなものが数多く出品。日本の伝統的な素材・い草を使った家具なども展示されていたそうです。

ふんわりした座り心地とさわりたくなるコーデュロイ生地が人気の「CONNECTテーブル付きソファ」

 

自然の中には、人間がつくり上げることができないような緻密なデザインがいたるところにちりばめられています。植物の葉脈や昆虫の羽の模様、水の波紋など、自然のデザイン美にふれるとなぜかリフレッシュできたり、自然とふれあってリラックスできたりという経験はみなさんにもありますよね。

それは、自然界からのエネルギーを受け取り、壮大な自然の中のミクロの世界をのぞき見て新しいインスピレーションを受け取っているからともいわれています。

 

 

◆サステナビリティを重視した素材

イメージ

 

素材そのものが重要視されているという点も、今の時代を反映している気がします。先ほども書いたように、タオル素材や、い草以外にも木材、テラコッタ、リネンなどオーガニックなものがトレンドの中心に。

さらに、サステナビリティを意識している点も押さえておきたいところ。適切なメンテナンスで長期間使えるレザーや、リサイクル素材にも注目が集まっています。

自然の素材は手触りがよく、ふれたときにホッと落ち着きますよね。そんな家具を暮らしのなかに取り入れることで、よりリラックスできる空間を演出するというのが今のトレンドなのです。

 

◆有機的デザインを象徴する「一枚板」

ダイナミックな一枚板。自然のエネルギーを享受できるように暮らしを整えることが、癒しの空間を作る一番の方法かもしれません。@rewoodworks

 

自然の形状をそのまま生かした一枚板の天板は、有機的デザインを象徴するものといえるかもしれません。一枚いちまい違う木目、ゴツゴツした耳があったりウロがあったり…。手で触れると自然のエネルギーが伝わってくるようです。

見た目や触り心地から、人は多くのインスピレーションを受け取ります。何気なくふれているだけでも、癒されているような感覚になるから不思議ですよね。

天然木の一枚板のなかでもサステナビリティを実現しているのが、循環型一枚板「rewood」です。

厚みのある天然木の丸テーブル。今では手に入らない素材に出会えるのも「rewood」の魅力

 

使われなくなった座敷机の天板を再利用する「rewood」は、半永久的に使える素材を丁寧につむいでいく、というコンセプトのもと、たくさんの座敷机を循環させています。

何百年という長い時間をかけて成長してきた木材を伐採してつくられた座敷机。流行らなくなったからといって、簡単に捨てていいはずがありません。ストック素材をできる限り再利用して乱伐を防ぎ、新しいアイデアで流通させる「rewood」の取り組みは、今改めて注目されています。

サステナビリティが新時代のトレンドであるならば、「rewood」はまさにその象徴ともいえるプロダクトだといえます。

一枚板とスチール製の足の組み合わせがスタイリッシュ。「rewood1500 テーブル」。トレンドにも左右されない魅力があります

 

******************

“トレンド”と書いてはみたものの、実際のところ有機的デザインは流行に左右されにくい印象もあります。たとえば、建築の巨匠フランク・ロイド・ライトの「有機的建築」思想は、時代を超えて今も色あせていません。人間の根幹には自然に触れていたいという自然回帰のような思いがきっとあるんだろうな、と感じます。

昔々、山や森に囲まれていた暮らしから何千年も経った現代の人間。ビルやコンクリートに囲まれた現代にせめて身近に自然を感じていたいと思うのは、人としての根幹、もっというなら動物的本能のようなものなのかもしれませんね。

イメージ

 

 

御神木って何? 白蛇が住む御神木と伊勢神宮の御神木の話

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT天然素材 木のテーブル木曽五木

 

神霊が宿るとされる御神木

神社に行くと、木の幹にしめ縄を張り巡らせてあったり、柵が設けてあったりしますね。一般的には神社の境内にあり、神聖視されている樹木のことをいいます。

 

イメージ

 

御神木と聞いて、愛知県名古屋市の熱田神宮の「大楠」を思い出しました。熱田神宮は三種の神器のひとつ「草薙剣」を祀る神社として有名ですが、境内には大きなクスノキが茂っています。

なかでも「7本楠」という、ひときわ大きなクスノキが7本あるのはご存知ですか? 参拝客が目にすることができるなかで一番大きなものは手水舎の傍にある「大楠」。樹齢1000年以上といわれるその姿には神気を感じます。弘法大師のお手植えともいわれているこの「大楠」。幹の中には白蛇が住んでいて、時折顔を出すそうです。なんでもこの白蛇、神の化身とも言われていて、見かけると金運があがるという言い伝えもあるのだとか。

イメージ

 

残念ながら、私はいまだに白蛇を拝んだことがありません…。

「大楠」の根本には、卵のお供えが置かれています。白蛇がおなかをすかせて卵を食べにくるときが、顔を見られるチャンスかもしれませんね。

イメージ

伊勢神宮の御神木の行事

御神木絡みでいえば、来年は20年に一度の伊勢神宮の式年遷宮ですね。社殿と神宝を新調し、大御神を新宮へ遷すという一大イベント。9年の歳月をかけて行われる神宮最大の行事です。

来年の式年遷宮に向けて、御神木のお祭りがすでにスタートしています。

新宮用のご用材の安全な伐採を祈祷する「山口祭」、正殿の心御柱(しんのみはしら)用の御神木の神を祀る「木本祭(このもとさい)」、御神体を納める器に使う檜を伐りだす「御杣始祭(みそまはじめさい)」、伐採されたご用材を曳き入れる「御樋代木奉曳式(みひしろぎほうえいしき)」など、全部で10の御神木に関するお祭りや行事が執り行われます。

 

「御木曳行事」は遷宮諸祭・行事の中で最もにぎやかとされる行事です

 

その後、「鎮地祭」、「後鎮祭」など、社殿建築に関する行事が14、「御装束神宝読合(おんしょうぞくしんぽうよみあわせ)」から、最後の「御神楽(みかぐら)」など9つある神還しの儀式を合わせ、全部で33ものお祭りと行事が行われます。

御神木の行事、「御木曳(おきひき)行事」は、遷宮一連の祭事のなかでも、最もにぎやかな行事。市民が参加できる数少ない機会というのもありますし、全国から見物客もやってきて盛り上がるそうですよ。

「御木曳行事」の際、御神木はこの五十鈴川を川曳して運ばれます

 

ちょっと気になった御神木についてのお話でした。

 

**********************

 

ちなみに、CONNECTにも「御神木」があるんです。もちろん通称ですが、特別なパワーに敬意をこめて「御神木」と呼んでいます。

CONNECTの「御神木」

 

樹齢1500年以上の木曽檜の巨木。樹齢を重ねた木は包み込むような柔らかさと特別なエネルギーが宿っているなぁと感じます。

木肌に触れるだけでエネルギーを感じたり、癒されたりするのって「木」ならではの感覚なんじゃないかな~と思っています。

 

そんな御神木も、環境の変化や腐朽によって厳しい状況になっているものもあり、伐採するか否かの決断を迫られているものもあるそうです。。

2020年の「令和2年7月豪雨」で、岐阜県瑞浪市「大湫神明神社」の樹齢約670年のスギが倒木したのが思い出されます。地盤が緩んだことも原因のひとつではあるけれど、それだけでなく根の体積が幹に比べて小さく経年腐朽などの要因も加わってバランスを崩したという見方もあるようです。

イメージ

 

ご神木が置かれている環境も厳しいのだなと感じてしまいました。そんななかで1000年以上樹齢を重ねているって、もう奇跡に近いことなんじゃないかとすら思ってしまいますね。

 

 

【参考】

熱田神宮「大楠」

https://www.atsutajingu.or.jp/jingu/about/keidai/keidai22.html

 

伊勢神「式年遷宮」

https://www.isejingu.or.jp/sengu/the62nd/

 

伊勢御遷宮委員会

https://isesengu.jp/okihiki/index.html

 

CONNECT Instagram

https://www.instagram.com/connect.interior/

 

初心者でもできるウッドプランクの魅力とは?

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIYリビング空間に合う暮らしの提案憧れのライフスタイル

毎日暑いですね。

私は、すでにバテバテの夏を迎えております。

ところで、みなさんは夏といえば何を思い浮かべますか?

私は、花火、スイカ、かき氷、ラジオ体操! 私は、なぜだか懐かしいシーンを思い浮かべてしまいます。

みなさんのなかには、夏といえばバーベキュー!という人も多いのでは? 私は今年バーベキューのチャンスに恵まれたら、「ウッドプランク」にトライしてみたいと思っているんです。

「ウッドプランク」とは、木の板の上に食材をそのまま載せてグリルする調理法のこと。

海外ではもはや定番の「ウッドプランク」。ようやく日本でも定着しつつあるようですが、実は私はまだ未体験なのです。

今年の夏は、ぜひ挑戦してみたいなと思ったので、いろいろ調べてみました。

 

ウッドプランクとは

プランク=板、つまり「ウッドプランク」は木の板に乗せて焼く調理法。直接網の上に食材をのせるバーベキューと違い、木の板の上に食材を置き、板ごと焼くのが特徴です。

 

手順は、

①木の板を水に浸す。

バットなどに水を張り、木の板を30分~1時間ほど水に浸します。浸す時間は木の厚みに応じて調節してください。

このとき、水の代わりに白ワインに浸すと香りも移っていっそうおいしく仕上がります。

②食材をのせて焼く

魚や肉、野菜、パン、チーズなど、お好みの食材を木の板にのせ、上から蓋(なければアルミホイル)をかぶせて蒸し焼きにします。

 

手順といってもたったこれだけ!手軽にいつもよりワンランク上のバーベキューになりそうで、早くもワクワクです。

 

岐阜県飛騨市の「HIDA WOOD PLANK」

 

「ウッドプランク」はキャンプギア専門店やホームセンターなどでも販売されていますが、私がいいなと思ったのはコチラです。

「HIDA WOOD PLANK」 (画像提供/Newie)

 

アウトドア商品の企画販売などを手掛ける「Newie(ニューウィー)」さんの「HIDA WOOD PLANK」です。岐阜県飛騨市の広葉樹を使ったもの。「さくら」「くり」「ほお」と3つの樹種から選ぶことができます。

お手頃な価格というだけでなく、地域資源を活用したいという理念があるところにも魅力を感じました。

実は、建材や家具として利用される広葉樹はごくわずかなんです。扱いにくい小径木は、製紙や燃料用のチップとして流通するしかないのが現状でした。そんななか、広葉樹の新しい活用法として考えられたのが「HIDA WOOD PLANK」です。

森林資源に恵まれた岐阜県飛騨市(画像提供/Newie)

 

「広葉樹に新たな価値をつけて活用していきたい」という飛騨市に共鳴し、誕生した「HIDA WOOD PLANK」。製品化に至るまでのコラムもホームページに掲載されているので、興味がある人は見てみてください。

 

ホームページには、ウッドプランクの使い方やレシピなども詳しく掲載されています。こちらを参考に、みなさんもワンランク上のバーベキューを楽しんでみてはいかがでしょうか。

画像提供/Newie

「はじめてのプランクバーベキューガイド」

https://newie.jp/pages/wood-plank-beginner

 

「プランクBBQの極意! 初めてでも手軽に燻製風を楽しめるバーベキュースタイル」

https://newie.jp/blogs/column/16

 

あまりの暑さに目が回りそうですが、熱中症には気を付けつつ、涼しい山奥で夏の想い出づくりができたらいいな~と思っています。みなさんも、よき夏休みをお過ごしください。

 

 

【参考・協力】

Newie

https://newie.jp/

 

 

静岡市「駿府の工房 匠宿」で出会った隈研吾スツールと重厚な一枚板テーブル

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT天然素材 木のテーブル憧れのライフスタイル木育

里山で工房体験ができる「駿府の工房 匠宿」

源氏・今川氏・徳川氏ゆかりの史跡が残る静岡県静岡市駿河区の丸子(まりこ)。東海道五十三次の20番目の宿場「鞠子宿」として有名ですが、そこから車で5分ほどの場所にある泉ケ谷(いずみがや)というエリアを散策してきました。

▲泉ケ谷に着いたときはあいにくの曇り空でしたが、里山の自然を感じられてリフレッシュできました(筆者撮影)

 

泉ケ谷は10年ほど前に訪れたことがあるのですが、その時にはなかったおしゃれなレストランやゲストハウスなどができていて里山の自然+モダンといった雰囲気に進化していました。

今川氏に使えた連歌師・宗長がおこした寺「吐月峰柴屋寺(とげっぽうさいおくじ)」、樹齢300年以上という大銀杏の丸太が見どころの「千手観音堂」など歴史的なスポットも点在していますが、なかでもたくさんの人で賑わっていたのが「駿府の工房 匠宿」です。

▲「駿府の工房 匠宿」の施設内。建物自体も伝統工芸の技術を用いて作られています

 

隈研吾氏監修のスツールを自分の手で

「匠宿」は国内最大級の伝統工芸体験施設。竹細工や和染め、木工、漆や陶芸など、さまざまな工芸体験が用意されています。工房をチラッとのぞいてみると、楽しそうに“マイ箸”を作っている子どもたちがいたり、慣れない手つきで電動ろくろをまわしながら土を成形しているカップルがいたりと、みんな楽しそうです。

さらに奥へ進んでみると、「匠宿伝統工芸館」と書かれた場所があったので入ってみました。メインで展示されていたのは隈研吾氏が監修したスツール「タテヨコナナメ」というもの。

▲「匠宿伝統工芸館」の展示(筆者撮影)。静岡市の工芸や職人にスポットライトを当て、年に数回企画展覧会を開催。2024年6月末までは「タテヨコナナメ」の紹介展示、夏休み期間はまた別の展示に切り替わります

 

隈研吾氏と言えば、木材をふんだんに使用した建築で世界的にも知られている建築家です。2021年の東京オリンピックのメインスタジアム・国立競技場の設計をしたことでも有名ですよね。

そんな隈研吾氏が「匠宿」のために設計したのが「タテヨコナナメ」なんです。最低限の構造でできた本体に、3本の木材を取り付けて完成させるスツール。3本をどこに取り付けるのかは使用者の自由というデザインです。「匠宿」では、このスツールを自分で作ることができる木工特別体験プログラムも開設しているそうですよ。

▲3本の柱をどう組み合わせるか。考えるのも楽しい

 

HPには隈研吾氏のメッセージが掲載されています。

「子供から大人まで楽しめる『育てる』スツールをデザインしました。

最初は不安定なスツールが、木の材料を補強していくことで人を支えられる程に強く育っていきます。

一本一本は小さく強度のない木をたくさん集めて強い建物を作る、日本古来の木造技術を学び体験できるスツールです。(後略)」

▲基本構造は同じなのに、作る人によって表情が変わるのがデザインの妙

 

デザインの斬新さだけでなく、強度や使い勝手などを自ら考えるツールなんですね。

地元・静岡のヒノキを使った贅沢な質感、木の香り、そしてデザイン—。自慢したくなるようなスツールが完成しそうです。

自分が使う道具(家具)がどのような素材でどうやって作られるのかを知ることはとても有意義なこと。子どもの場合、小さなうちから実体験として身についていると、その先のモノの見方がずいぶん違うだろうな~と思いました。

 

▲工程はさほど難しくないので、お子さんと挑戦してみるのもいいですね

 

ギャラリーで目に留まった一枚板のテーブル

ほかにも、施設内にある「ギャラリーTeto Teto」では、民藝品、工藝品のほか普段使いができる日用品まで、ものづくりの粋を集めたアイテムが展示・販売されています。

お土産やプレゼントにしたいアイテムがたくさん並ぶなか、私の目が釘付けになったのは、一角にど~んと置かれた一枚板のテーブルです。

▲この存在感、実物をぜひ見てほしいです

このカーブ、厚み、なんという存在感。立派ですよね。重厚感といい、艶と色、手触りといい…。憧れのまなざしで何度も見てしまいました。

ショップの入り口には隈研吾氏デザインの「TSUMIKI」が販売されていましたよ。

▲「ギャラリーTeto Teto」の一角(筆者撮影)

 

里山の自然に囲まれて、匠の技を身近に感じられる「駿府の工房 匠宿」。

ファミリーや友達と一緒に行ってみてください!きっと楽しい体験ができますよ。

▲裸足でのびのび遊べるキッズ工房「星と森」の木育スペース。この日もたくさんの子どもたちでにぎわっていました

 

【協力・画像提供】

駿府の工房 匠宿

https://takumishuku.jp/index.html

 

【参考】

丸子まちづくり協議会

https://mariko-mk.com/

国土交通省関東地方整備局横浜国道事務所

「東海道への誘い」

https://www.ktr.mlit.go.jp/yokohama/tokaido/index.htm

 

アーティスト・荒井良二さんの展覧会にて~建築廃材を使用した“名前のない家たち”~

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT憧れのライフスタイル

先日、アーティスト・荒井良二さんの展覧会に行ってきました。 荒井良二さんといえば、絵本作家として有名ですが、2012年のNHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを記憶している方もいるのではないでしょうか。

≪荒井良二さん プロフィール≫

1956年山形県生まれ。『たいようオルガン』でJBBY賞を、『あさになったので まどをあけますよ』で産経児童出版文化賞・大賞を、『きょうはそらにまるいつき』で日本絵本賞大賞を受賞するほか、2005年には日本人として初めてアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を受賞するなど国内外で高い評価を得る。また、NHK連続テレビ小説「純と愛」のオープニングイラストを担当、「みちのおくの芸術祭山形ビエンナーレ」芸術監督に就任するなど、その活動の幅を広げている。(HPより引用)

『たいようオルガン』

 

ダイナミックでカラフルな色彩や、想像力をかきたてられるような文章、一緒に旅に連れて行ってくれそうな荒井さんの作品は、子どもから大人まで幅広い人気を誇っています。 今回の展覧会「new born~いつも しらないところへ たびするきぶんだった~」では、そんな荒井さんが手がけた作品が一同に会するということで、ワクワクしながら行ってきました。

会場には、これまで手がけた絵本や原画がずらり。絵本だけでなく絵画やイラスト、音楽、舞台美術なども展示されていました。 私の背丈ほどもある大きな絵本、構想段階のプロットやラフなども展示されていて、制作の過程をあれやこれやと想像しながら会場を回っていました。

2階にあがると小さな家が展示されたスペースが開設されていました。

『旅する名前のない家たちを ぼくたちは古いバケツを持って追いかけ 湧く水を汲み出す』 と名付けられた荒井さんのインスタレーションです。 展示スペースには、ユニークな「家」が約40点も並べられています。これは、2010年の荒井さんの作品「逃げるこども」という絵を立体作品として構成したもの。「家」には小さな男の子や女の子が住んでいて、それぞれの物語を紡いでいるようにも見えます。

“名前のない家たち”と名付けられたこれらの作品は、積水ハウス株式会社の協力のもと、すべて建築廃材を使用して作られたもの。同社が取組む≪ゼロエミッション≫の一環として、新築施工現場で分別されたコンテナ約2杯分の廃材を使って制作されているそうです。

≪ゼロエミッション≫とは、人の生活の中で発生するあらゆる排出(エミッション)をゼロに近付けることを目指す理念や手法のこと。国や自治体、住宅、食品やアパレルなど各企業が取組みを進めています。

新築の家や家具、新しいものを生み出す過程でどうしても出てしまう木端材。それをアート作品にアップサイクルするというアイデアは、近年さまざまなシーンで目にするようになりました。 以前、このブログで紹介したrewoodの「Living_bird」もアップサイクル作品のひとつです。

rewoodの「Living_bird」

建築とアートの親和性は言わずもがなですが、アートを見に行って、思いがけずアップサイクルについても考えることになった一日でした。

展示を堪能したあと、敷地内にある茶室でお抹茶と荒井さん考案の甘味をいただきました。たまにはこういう休日もいいですよね

 

【参考】

◆荒井良二「newborn」 https://arairyoji-nb.exhibit.jp/

◆刈谷市美術館 https://www.city.kariya.lg.jp/museum/exhibition/schedule/1010156.html

◆「”SEKISUI HOUSE meets ARTISTS”第二弾を開始 感性と想像力を刺激するアートのある暮らしを提案」 https://www.sekisuihouse.co.jp/company/topics/topics_2023/20230511/

「ゴッホの椅子」。人間国宝が愛したスペインの民藝椅子

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT

オランダの画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。彼の油絵に由来する、その名も「ゴッホの椅子」と呼ばれる椅子があるのをご存知でしょうか。

民藝やインテリアに造詣の深い方なら知っているかもしれませんね。私はつい最近知りました。

フィンセント・ファン・ゴッホの銅像

 

無骨で粗削り。手作業で組み上げられる「ゴッホの椅子」

ゴッホといえば、いわずと知れたポスト印象派の画家です。

さも知っているかのように書いていますが、ゴッホ、いやアート自体数年前までさほど興味がなかった私です…。

2022年に開催された「ゴッホ展」を見に行ったのがきっかけで、ゴッホの生涯や絵に興味がわいて、どこに行ってもゴッホの文字が目に入るようになりました。

そんななか最近出会ったのが「ゴッホの椅子」という本です。正式なタイトルは「ゴッホの椅子 ~人間国宝・黒田辰秋が愛した椅子。その魅力や歴史、作り方に迫る~」(久津輪雅著:誠文堂新光社刊)。2016年に発行された本で、新しい本ではないのですがとても新鮮な気持ちでページをめくっていました。

丸太を削った脚、植物を編み込んだ座面、無骨で粗削りともいえるこの椅子。木材を生木のまま手作業で一気に組み上げるというスペインの民藝椅子で、ゴッホの油絵≪ファン・ゴッホの椅子≫、≪アルルの寝室≫に描かれている椅子に似ていることから日本では「ゴッホの椅子」という愛称で親しまれてきました。

「ゴッホの椅子」が展示されている日本民藝館(東京都目黒区)。西館開館日の第2・3水曜日、第2・3土曜日のみ見ることができます

 

1960年代に民藝運動の活動家によって日本に紹介されると、「ゴッホの椅子」はたちまち人気に。無骨で粗削りともいえる姿に魅入られた日本の工芸家たちによってさらに広められていきます。

なかでも「ゴッホの椅子」を愛してやまなかったのが、工芸家でのちに人間国宝にもなった黒田辰秋です。「ゴッホの椅子」が日本に紹介されたころの時代背景や、黒田氏の椅子づくりにかける情熱、ヨーロッパへの「ゴッホの椅子」視察旅行のエピソードなどがつづられたのがこの本なのです。

 

黒田氏が「ゴッホの椅子」の視察に訪れたスペインのグラナダ地方(イメージ)

 

「王様の椅子」、皇居の椅子をつくった黒田氏が惹かれた「ゴッホの椅子」

黒田辰秋の代表作のひとつとして本の中で紹介されているのは、映画監督・黒澤明のために作られた「王様の椅子」。厚みが9cmもあるナラの厚板が4枚も使われていて、サイズは高さ約130cm、幅85cm、奥行80cmとかなりの大きさです。背もたれには黒田氏を象徴するモチーフ“彫花文”があしらわれ、漆塗りで重厚感たっぷり。黒澤監督が座っている写真が載っているのですが、彼をがっちりと支える堂々とした佇まいは、まさに「王様の椅子」。

また1968年、黒田氏は宮内庁からの依頼で皇居の新宮殿で使うテーブルや椅子を制作。日本産、日本製の最高級品で揃えるという方針に合わせ、宮崎県産のクリを使い高価な純日本産の漆を20回も塗って仕上げられました。この時のデザインの参考になったのは中国の曲木椅子だったそうです。

 

皇居の千草・千鳥の間に置かれた黒田氏が制作した椅子宮内庁HPより

 

重厚感たっぷりな「王様の椅子」と、最高級の素材で仕上げた皇居の椅子。素朴なつくりの「ゴッホの椅子」とはまったく結びつかないように思えますが、黒田氏の椅子づくりの根底には「ゴッホの椅子」づくりが大きく影響していたようです。

皇居の調度品を制作する前年の1967年、黒田氏は「ゴッホの椅子」の故郷・スペインへ視察を決意。椅子づくりの村への視察は「創作は、歴史の積み重ねの上にあるべきだという黒田の思いからだった」(P57)と本書には書かれています。

現地で黒田氏が撮影した映像が残されています。

 

視察を終えて帰国した黒田氏はその後も、この時の映像を客人や作業員たちに披露して熱く想い出話を語っていたそうです。椅子文化が根付いているヨーロッパへの視察は、黒田氏にとって実りあるものだったことがうかがえます。

 

========================

スペインの庶民のためにつくられてきた椅子が、日本でなぜこんなにファンを増やしてきたのか。貴重な写真と資料も併せてじっくり読ませてもらいました。本の最終章では、ゴッホの椅子のつくり方まで紹介されています。

「ゴッホの椅子」を所蔵する民藝館や資料館も掲載されていたので、機会があれば実物を見てみたいな~。みなさんも、興味があればぜひ読んでみてください。

 

【参考】

「ゴッホの椅子 ~人間国宝・黒田辰秋が愛した椅子。その魅力や歴史、作り方に迫る~」(久津輪雅著:誠文堂新光社刊)

東京文化財研究所「黒田辰秋」