前回、『異端の奇才―ビアズリー展』で見た、アートと家具に息づくジャポニズム』では、19世紀に流行っていた「アングロジャパニーズ様式」の家具についてお届けしましたが、今回は「Japandhi(ジャパンディ)について書いてみようと思います。
先日、インテリア好きな友人の家に遊びに行ったのですが、数年ぶりに訪れた彼女の家は、以前とは違った雰囲気になっていました。彼女いわく「ジャパンディスタイルでまとめた」とのこと。
「Japandi(ジャパンディ)」とは、「Japanese(日本の)」と「Scandinavian(北欧の)」の意匠を融合させたスタイルのこと。日本の伝統的な和とニュートラルな北欧デザインがミックスされたスタイルは、とてもリラックスできて居心地のいいものでした。
2010年ごろから台頭してきた「ジャパンディ」ブーム
北欧のデザイナーが日本の文化に注目したことから生まれた「ジャパンディ」は、2010年頃にはすでにインテリア業界では使われていた用語のようです。
私たちがよく目にするようになったのは2020年より少し前くらいだったような気がします。大型家具店などでも“ジャパンディ”スタイルが大きく取り上げられていたのを覚えています。
コロナ禍を経て、家の居心地の良さを求める人が多くなったこともあり、すっかり定着してきたように思いますが、ここでどんなものなのか、特徴を整理してみようと思います。
「ジャパンディ」の特徴
◆ミニマルで機能的
・和の直線的なデザインや、引き戸、障子などに見られる空間を仕切る機能的な要素がつまっている。
・余白の美を追求するレイアウト
・必要最低限のものしか置かないミニマルな美
◆自然素材を使う
・陶器、和紙、木工など、日本の職人技や北欧のハンドクラフト感があるものを置く
・木、竹、麻、リネンなど、自然素材を使用したナチュラルな風合いを重視
・観葉植物などグリーンを配置
◆配色はアースカラー
・主張しない色、例えばベージュ、アイボリー、グレージュ、淡いブラウンなどのナチュラルなアースカラーを使う
◆ローアングル
・日本の「座」の文化を意識した床に近い目線
・低めの家具で揃えることで開放感を演出
◆柔らかな光
・直接的な光より柔らかく空間を照らす間接照明が中心
・白色より電球色で温かみを出す
和ベースが「和モダン」、北欧ベースが「ジャパンディ」
和モダンと何が違うの?と思う人もいるかもしれませんね。和モダンは、日本の伝統美をベースに現代風のデザインを取り入れたもの。つまり「和」がベースになっています。
一方、ジャパンディは、北欧のスタイルに和の雰囲気をプラスするという考え方。「北欧」がベースになっているという違いがあります。
ちなみに、「ジャパンディスタイル」に向いているのは、こんな家具。



背の低い家具、「座」の文化、余白の美といったジャパンディのコンセプトは、子育て世代にもフィットしそう。実際に友人宅の子どもたちも、床でおもちゃを広げたり、ローテーブルでお絵描きしたりと、楽しそうに遊んでいました。
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友人宅で印象的だったのは、南部鉄器の茶器。凛とした佇まいだけれど、柔らかなフォルムを帯びた急須に日本の美しさを感じました。
日本の美学ともいえる「わび」「さび」。風合いや味わい深さを神髄とする精神と、北欧の“ヒュッゲ”(=居心地のいい空間)が融合した「ジャパンディスタイル」。日本の生活や文化にもちょうどいい心地よさをもたらしてくれそうだなと、美味しいお茶をいただきながら改めて感じたのでした。