あの大屋根リングの設計者が語る“森・都市建築・未来”を体感。『藤本壮介の建築』へ【前編】

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圧巻でした。

最初のエリアからずらりと並べられた模型がすごい。なんとその数1,000点超!

訪れたのは、東京は六本木にある森美術館で開催中の『藤本壮介の建築/原初・未来・森』。藤本さんの名前は、ご存知の方も多いかと思います。日本を代表する建築家で、最近では大阪国際博覧会で大きな話題を呼んだ、あの大屋根リングの設計をされた方です。

この展示に興味を持ったのは、タイトルにある「原初・未来・森」に興味をひかれたから。建築と森は切っても切れないものではありますが、数々の建築を手がけてきた藤本さんが、それをどのように捉えているのかが気になって、ずっと見に行きたいと思っていたのです。

展示は全部で8つのセクションにわかれて、藤本さんの思想やプロジェクトを紹介していました。展示の中では、藤本さんのインタビューがいくつも公開されていたのですが、そのなかでとても印象的だったのが、セクション2の動画で流れていものでした。

 

◆大都会・東京と、大自然・北海道の共通点とは

北海道生まれの藤本さんは、幼少期から身近に雑木林がある環境で育ったといいます。自然の中で走り回ってきた藤本さんが、大人になって東京に出てきたときに感じたのが、意外にも「居心地いい」ということだったと語っていました。

それはなぜか―。

「東京の入り組んだ細い道が雑木林や森の小径なんかと似ていたから。雑然とした東京と雑木林はおそらく共通している」ということを話していました。「雑木林は乱雑に小枝が生えていて、守られているような安心感がある。密度高く囲まれているけれど、同時に開かれてもいる。東京の木造家屋や電信柱なんかがそれと同じ役割をしていると思った」という旨のことを答えていらっしゃいました。

北海道の大自然と東京の大都会。相反するように思えますが、藤本さんにとっては共通する安心感や包容力といったものが感じられたのだそう。その感覚をもとに、建築に森という性質を取り入れようという考えに至ったそうです。

藤本さんが手がけた太宰府天満宮の仮殿。かなりの存在感だが3年という期間限定の建築のため2026年ごろには解体される予定

 

藤本さんのこうした思想は、数々の建築に反映されてきました。個人住宅、商業施設、ホテル、複合施設と四半世紀にわたりさまざまな建築プロジェクトを手がけてきた藤本さんですが、今回はその設計図や模型に加え、インスタレーションや空間を体感できる大型模型、プロトタイプ(試作品)が一堂に会する展覧会なのです。

 

◆建築模型の森を散策

少し話が飛びましたが、私なりに展示を振り返ってみたいと思います。
まず、1,000を超える模型が並ぶセクション1「思考の森」は、藤本さんが今まで手掛けた100を超える建築プロジェクトの全体像が一望できるようになっています。完成形ばかりでなく、アイディアのもととなったオブジェや中途段階の模型、バリエーション違いなども含まれ、それぞれのプロジェクトが完成までにどんな道をたどったのかを想像することができます。

ペットボトルや、ナイロンスポンジ、マッチ箱を積み上げたものなども並んでいます。私たちが日常よく見るものも建築のヒントになっているんですね。

さらに、1,000超の模型は3つの系譜に分類されています。

まず1つめは、“閉じているはずの円環が外部に開かれていることを表す「ひらかれ かこわれ」”、2つめは、“空間の用途や性質があいまいで多義的である「未分化」”、“多数の部分が一つに建築を構成する「たくさんのたくさん」”。

この3つが、プロジェクトの中で融合しながら、森のようにゆるやかなつながりを生み出しています。

建築に明るくない私にはちょっと難しく感じてしまったのですが、模型を眺めていると、なんとなく藤本さんの思想の糸口がつかめるような気持がしました。

 

◆あわいの空間から切り取られた都市の風景を見る

セクション2「軌跡の森~年表~」は、世界的な背景や建築業界の重要な出来事とともに、藤本さんの軌跡をたどるパネル展示。冒頭で紹介した、藤本さんのインタビューの内容はここで見ることができます。

さらに進むとセクション3「あわいの図書室」のゾーンへ。

藤本さんの建築に着想を得たテーマに沿ってブックディレクターが選書した40冊の本が真っ白な椅子に1冊ずつ配置されています。「本を読む/読まない間(あわい)にある空間」として設けられた実験的な場所ゆえ、来場者は本を読んでも読まなくてもいいし、窓からの景色をただ眺めるだけでもOK。大きく開かれた窓から見える都市の風景と藤本さんの建築思想を重ねてみるのもおもしろそうです。

続いてセクション4の「ゆらめきの森」。建築の中で人はどう動いているのか、を可視化した展示となっています。模型の中を動くたくさんの人を俯瞰で眺めながら、建築という空間での人の動線ってこんな感じなんだな~と実感しました。

今日のところはここまで。次回は、「大屋根リングの大模型」を中心に書く予定です。お楽しみに!

<藤本壮介プロフィール>

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年に建築設計事務所を設立。ヨーロッパ書く国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。2025年大阪国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任する。

主なプロジェクト/《House N》(2008年、大分)、《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《House NA》(2011年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)、《白井屋ホテル》(2020年、群馬)、《マルホンまきあーとテラス(石巻複合文化施設)》(2021年、宮城)、《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)など。

※森美術館「藤本壮介 略歴」より抜粋

『藤本壮介の建築/原初・未来・森』

2025.7.2(水)~11.9(日)森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

 

 

<参照>

森美術館

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/

 

 

香りの歴史と香木の魅力。日本文化に息づく香道と「香十徳」

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目には見えないけれど、その場の雰囲気をつくったり、その人の個性を物語ったり、ときに記憶を呼び覚ましたりするもの——“香り”は脳や記憶に大きな影響を及ぼす存在だと感じます。

香水やルームフレグランスなど、香りは身近にあって日常に寄り添ってくれます。このブログで取り上げている「木」もそのひとつですが、今回はその香りの源である「香木」について少し紹介したいと思います。

1400年以上も前に伝わる「香木」の歴史

日本に“香り”が伝わったのは、1400年以上前に「香木」がもたらされたことがきっかけだといわれています。香木とは、その名の通り「香りのする木」で、お香の原料となる素材です。代表的なものに沈香(じんこう)や白檀(びゃくだん)があり、木の幹や樹皮、根の芳香や、樹木が傷ついた際に分泌される樹液が変質・熟成することで特有の香りを放ちます。

正倉院にある巨大な沈香。雅名は「蘭奢待(らんじゃたい)」。天下の名香として珍重され、足利義政や織田信長、明治天皇などが切り取った跡が残されています。出典:宮内庁ホームページhttps://shosoin.kunaicho.go.jp/treasures/?id=0000012162

 

東南アジアを原産とする香木は、祈りや儀式に使われ、仏教の伝来とともに日本に伝わりました。やがて平安時代には雅な貴族のたしなみとなり、武家の時代には香木を所有することが権力の象徴となり、戦国武将たちは兜に香を焚きしめて出陣したという話も語り継がれています。

江戸時代になると線香が登場して庶民に広まります。一方で吉原遊郭や歌舞伎の世界では、高価で優雅な香り「伽羅」がもてはやされ、憧れの象徴となっていたそうです。明治以降になると、西洋の香水文化と融合し、今につながる新しい香り文化が形成されていったとされています。

自然の力なくしては生み出せない香木は、地球が長い時間をかけて育んだ恵みであり、今では入手が難しいものも少なくありません。

 

世界から注目される日本古来の「和香木」

日本古来の樹木の中にも、香りが重宝されてきたものがあります。近年は「和香木」として世界的にも注目されており、このブログでもよく登場するヒノキはその代表格です。清々しく気分を落ち着かせる香りは古くからヒノキ風呂として親しまれてきました。

ヒバもまたヒノキチオールを豊富に含み、清涼感ある香りが特徴です。さらに、コウヤマキは針葉樹ならではの青々とした緑の香りで、森林浴をしているような気持ちにさせてくれます。

こうした樹木に加えて、沈丁花やクチナシ、金木犀などの花々も、日本の香り文化を彩ってきました。

現在ヨーロッパでは盆栽などと並び、香道も密かなブームだといわれています。香道は室町時代の後期、茶道・華道とともに確立された芸道で、香木の香りを鑑賞しながら和歌や書をたしなむ文化です。森林の豊かな国だからこそ育まれた、日本独自の美意識を感じますね。

 

一休さんの書んに伝わる香りの10の効能

お香がもたらす10の効能を書いた「 香十徳こうじゅっとく」は、中国の詩人・黄庭賢が詠んだもの。これを日本の世の中に広めたのがアニメ『一休さん』のモデルでもある室町時代の僧・一休宗純です。お香に詳しかった一休宗純が書にしたため、公家や武家だけでなく庶民にも伝わっていったとされています。

「香十徳」

1. 感格鬼神かんかくきじん ——感覚が鬼や神のように研ぎ澄まされる

2.清浄心身しょうじょうしんじん ——心身を浄化する

3.能除汚穢のうじょおえ ——穢れを取り除く

4.能覚睡眠のうかくすいみん ——眠気を覚まし集中できる

5.静中成友せいちゅうじょうゆう ——静けさの中で孤独感をいやす

6.塵裡偸閑じんりゆかん ——忙しいときにも安らぎを与える

7.多而不厭たじふえん ——多くても邪魔にならない

8.寡而為足かじいそく ——少なくても芳香を放つ

9.久蔵不朽きゅうぞうふきゅう ——長く保存しても朽ちない

10.  常用無障じょうようむしょう ——常用しても害がない

いかがですか。香りの効能がとてもわかりやすく伝わってきますね。香りの奥深さを知ると、木がより一層身近に感じられそうです。

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≪天然木を使った家具≫

CONNECTプロダクト

https://connect-m.jp/category/productall/

Instagram

https://www.instagram.com/connect.interior/?igsh=czhnMXcyaHQ5bXdu#

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ちなみに、このブログを書くにあたって、友人からもらったお香を焚いてみました。その名も「エターナル/香木の香り」。タイミングよく、これをプレゼントしてくれた友人がすごい!(笑)

香りが満ちてくると心なしか、凛とした気持ちになって筆が進んだような気がします。これからは、もっと意識的に香りを使ってみようと思いました。

 

【参考】

『Discover Japan』2025年5月号

特集「世界を魅了するニッポンの香り/いま注目の泊まりたいホテル」

 

林野庁「木曽五木」

https://www.rinya.maff.go.jp/chubu/kiso/morigatari/kisogoboku.html

 

遊牧民の手織り絨毯ギャッベ。 再生板との組合わせで時代にフィットしたインテリアを

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ユネスコ世界無形文化遺産にもなっているギャッベ

ギャッベ(Gabbhh)とは、ペルシャ語で「毛足の長い絨毯」を指す言葉。イラン南西部に暮らす遊牧民が、ひと針ひと針手織りする絨毯のことです。よく知られているペルシャ絨毯の一種ですが、独特の風合いを持っているのが特徴です。

 

天然の草木染と調質効果で快適に

ギャッベの素材は羊毛(ウール)です。ウールといえば、冬のセーターなどを思い浮かべる人も多いですよね。温かく保温性が高いイメージもありますが、夏にはサラリとした感触を得られるのが特長。朝夕の気温差±30℃という厳しい高地の環境で育まれた羊毛は、優れた調湿効果を備えているため、季節や場所を問わず一年中敷きっぱなしでも大丈夫なんだそうです。

織り目が細かく、適度なクッション性と心地よい手触り。そして何より魅力的なのは色合いや模様にあります。木の実や根、葉など山の植物を使った草木染は、天然素材ならではの濃淡があって味わい深さを感じられます。化学染料を使用していないので、アレルギーを持つお子さまにも優しいといえそうですね。

 

世界に1つだけのアート作品

結婚や出産といった人生の節目に送られるというギャッベは、遊牧民の母から娘へと受け継がれていく伝統的な織物。生命の源とされる樹木や、ヤギ、ヒツジ、ラクダといった動物のモチーフに、大地へのリスペクトや未来への希望といったものが表現されているのです。

こうしたモチーフに加え、四角、丸、三角、波型などの模様を丁寧に織り込んだギャッベは、デザイン性も高く評価されるようになり2000年ごろからアート作品としても注目を集めるようになりました。

なかでもカシュガイ族が手がけるギャベの手織り技術は、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されるほど。大自然のアート作品といわれるのもうなずけますね。

遊牧民の自由な感性で織り込まれた天然素材の絨毯はどれも1点もの。同じものはありません。世界に1つだけ、と思うと、その希少価値をますます感じます。

 

無垢家具とコーディネート

世界に1点だけのrewood無垢材テーブル

 

大自然のアートともいえるギャベは、無垢材との相性が抜群。天然素材を組み合わせることで、ハイグレードな生活空間を演出することができそうです。

自然の恵みを活かした素材、という意味では「rewood」と組み合わせてみるのもおすすめ。実はギャベ=Gabbhhは、英語の「garbage(ゴミ)」に由来しているといわれています。ゴミのように扱われていたギャッベは、改良を重ねて世界で注目される存在になったわけですが、このストーリー、捨てられるはずだった座敷机を再生した「rewood」と似ていますよね。

※rewoodについてはコチラ

 

再生板と手織り絨毯の組合わせで実現するサステナブル

時間が経つにつれて風合いが増すというのも共通する点。再生板と手織り絨毯の組合わせは、持続可能なライフスタイルとしても人気の高まりを見せています。相通ずるコンセプトをもつインテリアで、個性的でありながら調和のとれた空間を実現できたらいいですよね。

天然無垢材の一枚板テーブルは、トライバルな柄のギャッベとも相性がよさそう

遊牧民の感性豊かなギャッベは、敷いてあるだけでもパワーがもらえそうな気がします。ビビッドな色合いでインテリアの要にするのもいいし、お気に入りの柄を探すのも楽しそう。気持ちも豊かにしてくれそうですね。

 

Persia&Gabbeh

ペルシャ&ギャベ展

2025年8月2日(土)3日(日)4日(月)

現地の織り子さんの実演も見られる「ペルシャ・ギャベ」展。本格的なギャベが勢ぞろいする、年に一度の大展示会が開催されます。

Persia&Gabbeh

2025年も注目の“サステナブル”と、再生テーブル『rewood』の話

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気候変動や資源の枯渇といった地球規模の問題が、いよいよ現実味を帯びてきた今。「サステナブル」という考え方は、もはや一時的な流行ではなく、私たちの暮らしの中に根づきはじめています。

ファッション、食、住まい、さまざまな分野で、「環境への配慮」と「長く大切に使うこと」が、もの選びの基準になりつつあります。そんな時代の流れのなかで、家具業界でも注目されているのが循環型素材の活用やアップサイクルの取り組み。

「CONNECT」の髙橋さんに2025年の家具のトレンドと、インテリアのアップサイクルについて話を聞いてみました。

 

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CONNECTのインスタにもたびたび登場する店長の髙橋さん

 

最近は、家具のデザインというより素材を意識しているお客さまが本当に増えています。

SDGsやサステナブルというテーマは何年も前からいわれています。

家具は長く使えば使うほど味わいが出て、愛着もわくもの。ただ、経年変化や使い勝手、家族構成の変化などで処分を検討しなくてはいけない場面も出てきますよね。

最近ではそういった場面を視野に入れて、素材そのものがリサイクル、またはリメイク可能かどうかという点を、購入の時点から気に掛ける方が多くなってきました。

家具のリサイクルは環境への負荷を減らす有効な手段ですし、不要な家具を捨てないことは、ゴミ処理の負担を減らすことができるので廃棄物の削減にもなります。

“サステナブル”は一時のトレンドではなく、この先もずっとテーマになり続ける重要な要素です。

 

2025年のトレンドは3つ

2025年に注目の代表的なインテリアスタイルとしては、3つ挙げられます。

◆ビンテージナチュラル

・自然素材を活かし、使い込まれた味わい

・無垢材とアイアンなど、落ち着きのあるアンティークな風合い

 

◆モダンスタイル

・洗練された直線的なデザインが特徴

・モノトーンや光沢のある素材との組み合わせでシンプルにまとめる

 

◆ジャパンディスタイル

・和と北欧のミックススタイル

・木材、リネン、ウールなど自然素材を多く取り入れた温かみのある空間づくりを演出

 

どのスタイルにもマッチするのが自然素材を使ったサステナブルなインテリア。デザインの好みだけでなく、環境負荷の少ない素材、製造方法でつくられているか、そういった部分にも目をむけて選んでみるのがおすすめです(髙橋さん)。

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「木を、もう一度。」──再生木材が紡ぐストーリー

 

循環型の素材やアップサイクルの取組みが進むなか、注目されているのが「rewood(リウッド)」。

「rewood」の語源は、「re(再び)」と「wood(木)」。つまり、“木を、もう一度”。

「使われていた一枚板を再生し、地球の未来を明るく」というコンセプトを掲げ、30年~40年前につくられた座敷机のアップサイクルに取り組んでいます。

インスタグラムを見てみると、現在の木材市場では見られないサイズや貴重な樹種が揃っているのがわかります。加工の工程もストーリーズにアップされていて、新たな命が吹き込まれているんだな~と感じることができます。

テーブルとしてだけでなくソファの背板として使う、オリジナルデザインも展開。世界に本当に1つだけの家具を手に入れることができるのもおもしろそうですよね。

サステナブルは“我慢”じゃない。“選ぶ喜び”へ

 

“サステナブル”という言葉は、どこか“制限”や“我慢”と結び付けられて、少し窮屈に感じることもあります。
でも、rewoodのような取り組みは、むしろ気持ちをスッキリさせてくれるというか、新しい選択肢をもらったような感覚です。

捨てることへの罪悪感や、「古いものを使っている」という意識すら感じさせず、自然と“これがいい”と思える家具になっている。それがこれからの家具選びの、新しいスタンダードになっていくのかなと思いました。

rewoodのようなアップサイクルの取組みは、“モノとの付き合い方”そのものを見直すきっかけを与えてくれているのかもしれませんね。

買って、使って、壊れたら捨てるという一方通行の消費ではなく、修理しながら育てていく。やがてまた誰かの手に渡るかもしれない。そんな循環を前提としたモノづくりは、今まさに私たちが必要としているライフスタイルの在り方だなと感じました。

 

【参考】

rewood

https://re-wood.jp/?srsltid=AfmBOoqGffaj6zpn0tb9Ef5o1mbQSiZ1CoMoldOLBdivxDP2ykqyxOGw

 

ピアノを売ろうとして気づいたこと。一生モノの家具に共通する“木の価値”

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私の家には、ピアノがあります

KAWAIのアップライトピアノで、祖父が入学のお祝いに買ってくれたものです。まだ小さかった私にとって、それはとても大きな贈り物で、記憶のなかでも強く印象に残っています。

小学4年生くらいまでは、ピアノ教室に通ってレッスンを受けていました。でも次第に他の習い事に夢中になり、通わなくなってしまいました。

大人になった今では、年に数回ふと弾いてみる程度。ほとんど出番がなくなってしまったピアノを見て、「ちゃんと使ってくれる人のところに行ったほうが幸せなんじゃないか」と思うようになりました。

そんな気持ちもあって、よくテレビCMで見かける「ピアノ売ってちょうだい♪」のような買い取りサービスに査定をお願いしてみました。製造から30年以上経っているし、値段なんてつかないだろうな……と正直、あまり期待していませんでした。

ところが、想像していたよりもずっと高い金額を提示されて、驚いてしまったのです。

普通なら「ラッキー!」と即決してしまいそうなところですが、不思議なことに心がざわついてしまい、その場で「やっぱりやめます」と保留にしてしまいました。

なぜ私は迷ってしまったのか

その理由を改めて考えてみたところ、私の中で引っかかっていたのは「想い出の価値」だったのだと気づきました。

祖父に買ってもらったこと、一緒に育ってきたこと、発表会の前に必死で練習したこと。そんな記憶が、ピアノの音や姿とともに自分のなかに刻まれていたのです。

今ではあまり弾いていないとはいえ、私の暮らしの風景の中にそのピアノは当たり前のようにあって、「いなくなったら寂しいな」と思ってしまったのでした。

ピアノって、場所もとるし、引き取ってもらえれば部屋も広くなるし、合理的には手放したほうがいいのかもしれません。でも、なんだかそれだけでは説明できない、情のようなものがあるのですね。

今では電子ピアノもだいぶ普及してきました。電子ピアノは音量調整や録音機能などもあって便利ですが、いわゆる“電化製品”の分類になるため、2~3年ほどで買い取り価格がつかなくなると言われています。その点、アップライトやグランドなどのアコースティックピアノは、ほとんどの構造が木材でできていて、きちんとメンテナンスすれば30年、40年たっても価値が残るということを今回の経験から知りました。

この話、実は「家具」にも通じる気がしています

ファストインテリアのように、手軽に買い替えられる家具が身近になった一方で、コロナ禍以降、「一生モノ」と呼ばれるような無垢材の家具への関心も高まっています。
木の家具は、時間とともに色や手触りが変わっていきます。傷やシミさえも、“想い出”として味わいになっていく。それは、私にとってのピアノと同じように、ただの“モノ”ではなく、“一緒に育っていく存在”になっていくのだと思います。

そして、メンテナンスしながら長く付き合えるところもまた、木の家具やピアノの魅力です。手をかけることで、より愛着が深まっていくのです。

貴重な一枚板の座敷机をダイニングテーブルとして再生したrewoodの家具

 

読者のみなさんの家には、長く付き合っている家具はありますか? また、これから一緒に“育てていきたい”と思える家具、どんなものを思い浮かべますか?

 

【参考】

https://re-wood.jp/

隠れた日本の財産!?「クリプトメリア・ジャポニカ」の正体は国産杉だった

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スギの学名は「隠れた日本の財産」

「クリプトメリア・ジャポニカ(Cryptomeria Japonica)」って何かわかりますか?

聞きなれない言葉かもしれませんが、「クリプトメリア」というのはスギの学名で、日本固有の種を指します。

「クリプトメリア」は、ラテン語で「隠れたもの」という意味があります。スギの果実のような「球果(きゅうか)」が葉におおわれていることに由来していますが、「隠れた日本の財産」という意味でも広く知られています。

近年では、花粉症の原因として嫌われがちなスギですが、実は昔から日本人の暮らしを支えてきた大切な存在です。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、スギがなければ、今の日本の発展はなかったかもしれない――それほど重要な木だったのです。

 

日本初の電信柱もスギでできていた!

昔は、家屋の建材としてはもちろん、桶や樽などの日用品にもスギが使われていました。柱や屋根、道具、薪として、さらには葉が線香として使われることも。明治2年(1869年)、東京と横浜を結ぶ日本初の電信柱が建てられましたが、そのほとんどもスギ製だったそうです。

スギで作られた電信柱が描かれた清親畫帖 [2]/出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」

 

杉の苗の仕立て方、枝打ちなどの生育法と、杉の用法が描かれた明治初期の教育錦絵/出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」

 

スギの苗の仕立て方が描かれた錦絵。学校教育に使われていました/出典:国立国会図書館「NDLイメージバンク」

 

国策によって増えすぎたスギ

現在、日本の森林の約4割が人工林で、その中でもスギは最も多く植えられている木です。これは、戦後の国策が大きく影響しています。

焼け野原となった戦後の日本では、大量の木材が急ぎ必要とされました。そのため、成長の早いスギが全国各地に植えられたのです。こうした背景があって、今では青森県から屋久島まで広く分布し、秋田県、三重県、富山県、京都府、奈良県、高知県、宮崎県では、県や府の木にも指定されています。

日本の森林におけるスギの割合は44%。人工林のうちトップシェアとなっています(出典:林野庁「スギ・ヒノキ林に関するデータ」より)

 

ちなみに、スギの名前の由来には諸説ありますが、まっすぐに立つ姿から「直木(すぎ)」と呼ばれるようになったとも、成長が早く「すぐ木になる」ことから「スギ」と名づけられたとも言われています。

スクスクと育つスギは、日本の復興を支えてくれた存在でした。しかし一方で、今では手入れが行き届かない人工林が増え、荒廃してしまっているという現実もあります。そんななか、「隠れた日本の財産」であるスギをもっと活用していこうという動きも出てきています。

 

環境保護の視点からスギの利用を考えてみる

こちらは、コダマプロジェクトが制作する東濃杉を使ったソファ。

コダマローソファー3人用。岐阜県東白川村の東濃杉材だけで作られたオリジナルソファです

宙に浮いているかのような軽やかなデザインと、スギの柔らかい素材感がマッチした人気のソファ。ファブリックも洗える素材なので、お子様がいる家庭でも安心して使えそうですね。カラーリングも豊富なので、室内の雰囲気に合わせて選べるのが人気の理由となっているようです。

ウォールナットの無垢オイル仕上げのCNT-S-Kodama-3P。ドライクリーニング可能なカバーリングはカラーも豊富です

 

天然木のソファは、木の柔らかさや快適な座り心地が特徴。湿度の吸排気に優れた素材なので、室内の快適性が向上するというメリットもあります。生態系のバランスが崩れかけている今、国産のスギ材を生活の中で使う事は環境的にもとても意味のある事。

日本の発展に大きく貢献してきたスギは、まさに「隠れた日本の財産」です。健全な森を維持するためにも、スギの活用が進むといいなと思います。

 

<アイキャッチ画像出典・参考>

国立国会図書館NDLイメージバンク「杉と日本人のお付き合い」

https://ndlsearch.ndl.go.jp/imagebank/column/sugi

 

<参考>

林野庁「森林資源の利用と造成の歴史(2)」

https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/hakusyo/r5hakusyo_h/all/tokusyu1_2.html

 

北欧×和のインテリア「Japandhi(ジャパンディ)」で、暮らしにちょうどいい居心地の良さを

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前回、『異端の奇才―ビアズリー展』で見た、アートと家具に息づくジャポニズム』では、19世紀に流行っていた「アングロジャパニーズ様式」の家具についてお届けしましたが、今回は「Japandhi(ジャパンディ)について書いてみようと思います。

先日、インテリア好きな友人の家に遊びに行ったのですが、数年ぶりに訪れた彼女の家は、以前とは違った雰囲気になっていました。彼女いわく「ジャパンディスタイルでまとめた」とのこと。

「Japandi(ジャパンディ)」とは、「Japanese(日本の)」と「Scandinavian(北欧の)」の意匠を融合させたスタイルのこと。日本の伝統的な和とニュートラルな北欧デザインがミックスされたスタイルは、とてもリラックスできて居心地のいいものでした。

 

 2010年ごろから台頭してきた「ジャパンディ」ブーム

北欧のデザイナーが日本の文化に注目したことから生まれた「ジャパンディ」は、2010年頃にはすでにインテリア業界では使われていた用語のようです。

私たちがよく目にするようになったのは2020年より少し前くらいだったような気がします。大型家具店などでも“ジャパンディ”スタイルが大きく取り上げられていたのを覚えています。

コロナ禍を経て、家の居心地の良さを求める人が多くなったこともあり、すっかり定着してきたように思いますが、ここでどんなものなのか、特徴を整理してみようと思います。

 

「ジャパンディ」の特徴

 

◆ミニマルで機能的

・和の直線的なデザインや、引き戸、障子などに見られる空間を仕切る機能的な要素がつまっている。

・余白の美を追求するレイアウト

・必要最低限のものしか置かないミニマルな美

 

◆自然素材を使う

・陶器、和紙、木工など、日本の職人技や北欧のハンドクラフト感があるものを置く

・木、竹、麻、リネンなど、自然素材を使用したナチュラルな風合いを重視

・観葉植物などグリーンを配置

 

◆配色はアースカラー

・主張しない色、例えばベージュ、アイボリー、グレージュ、淡いブラウンなどのナチュラルなアースカラーを使う

 

◆ローアングル

・日本の「座」の文化を意識した床に近い目線

・低めの家具で揃えることで開放感を演出

 

◆柔らかな光

・直接的な光より柔らかく空間を照らす間接照明が中心

・白色より電球色で温かみを出す

 

和ベースが「和モダン」、北欧ベースが「ジャパンディ」

 

和モダンと何が違うの?と思う人もいるかもしれませんね。和モダンは、日本の伝統美をベースに現代風のデザインを取り入れたもの。つまり「和」がベースになっています。

一方、ジャパンディは、北欧のスタイルに和の雰囲気をプラスするという考え方。「北欧」がベースになっているという違いがあります。

ちなみに、「ジャパンディスタイル」に向いているのは、こんな家具。

コダマ「ローバックソファ」 /木の柔らかさや快適な座り心地を感じられる天然木のローソファ。アイボリー、ベージュなどファブリックの色を選べます

 

北欧 120ダイニングベンチNRT-CH-002/アッシュ材のフレームにしっかり編み込まれたペーパーコードの座面。クラフト感とナチュラルな質感で「ジャパンディ」スタイルを実現できそう

 

ピークチェアNRT-C-156 /シンプルで機能的な美を追求した人気の高い一脚。座面やフレームの色も選べます

 

背の低い家具、「座」の文化、余白の美といったジャパンディのコンセプトは、子育て世代にもフィットしそう。実際に友人宅の子どもたちも、床でおもちゃを広げたり、ローテーブルでお絵描きしたりと、楽しそうに遊んでいました。

 

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友人宅で印象的だったのは、南部鉄器の茶器。凛とした佇まいだけれど、柔らかなフォルムを帯びた急須に日本の美しさを感じました。

日本の美学ともいえる「わび」「さび」。風合いや味わい深さを神髄とする精神と、北欧の“ヒュッゲ”(=居心地のいい空間)が融合した「ジャパンディスタイル」。日本の生活や文化にもちょうどいい心地よさをもたらしてくれそうだなと、美味しいお茶をいただきながら改めて感じたのでした。

 

 

 

 

 

東京新木場「木材会館」。映画、CM、TVにも登場する国産材をふんだんに使った木のビル

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新年のご挨拶にはだいぶ遅くなってしまいましたが、みなさま今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

さて、今回は東京都江東区新木場にある木材会館についてお伝えしようと思います。

新木場駅の構内。木材推しです!

 

新木場駅を降りてすぐの場所にある木材会館。映画やドラマのロケ地としても使用される撮影スポットでもあります。

駅前のモニュメント

 

近づいて全貌が見えると、思わずパシャパシャと写真を撮りまくり。

外観がすでにかっこいい!

木とコンクリートがランダムに組み合わさって、リズミカルな印象を受けます。「木材を使っています!」というこのインパクトは、さすが木材会館というだけあります。

木材業界のシンボル「木材会館」

 

 

■ヒノキの大梁がダイナミックな7階ホール

ヒノキの香りと自然光に包まれてなんとも開放的!

天井から壁にかけて、大きなL字型の大梁が並んでいます。圧倒的な存在感を放つダイナミックな梁は、誰もがしばらくポカンと見上げてしまうほど。

入口から奥までが24m、幅19mという実際にも広い空間なのですが、さらに広く感じさせているのは5.4mという天井の高さかもしれません。

5.4mという高さは、万が一床面で火災が起きたとしても、炎や高温の煙が梁に触れないようにするためなんだとか。この天井高を確保することで、木を不燃化することなく自然のまま使用することが可能になったとのことです。

板状の木を積み上げたデザインに注目が集まる7階大ホールの入り口

 

ちなみに木の不燃化処理とは、不燃薬剤に木を浸して木材の中の水分と薬剤を転置する方法だそう。木が重たくなる、木の質感が変わってしまうこともあるため、できる限り自然のまま使いたいというのが同会館のデザインに反映されているようです。

梁に使われているのは岐阜県産の良質なヒノキ。ヒノキの角材を束ねてボルトで縫い合わせ一体化したものを1本の梁として使っているとのこと。接着剤をいっさい使わずに仕上げているため、ボルトを外せば元の角材に還元され、他の用途への流用が可能。ビルの寿命後の再利用まで考えられているのはさすがですね。

 

■思わず裸足で歩きたくなるヒノキ舞台

舞台では演劇なども行われるそう

1階のギャラリーにはヒノキ舞台が設置されています。舞台の東側にはヒノキの角材がランダムに組み合わされた壁。ユニークですよね。暗号でも唱えたら「ゴゴゴー!」と音を立てて開きそう(笑)。

せっかくなので靴下を脱いで裸足で舞台に立ってみました。冬だったのにそんなに冷たさを感じず、木の心地よさが足の裏から伝わってくるような気がしました。

ヒノキ舞台のある1階ギャラリー

 

奥には茶室も用意されています。

水屋を備えた本格的な茶室で、お茶や生け花、詩吟の教室などに使われているそうです。

1階の茶室

 

■小ホールに立つスギの木立!?

波打つデザインに木目の美しさが際立つカウンター

入口には木目の特徴をデザインに活かした大きなカウンターが目に留まります。ヒノキの角材を波上に削り、波状に削り、積み重ねて製作されたもの。板目と柾目の違いがはっきりと目に見えて、木の力強さとかエネルギーを感じます。

案内してくださったガイドさんが「奥に木立がありますよ」と言うので、ホールの奥に進むとこんなスペースが用意されていました。

5cmほどの幅にカットされたスギ板が天井から床に、何本も張り巡らされ、本当に「スギの木立」が表現されていました。カーテンをあければ自然光が木立の間から差し込んでくるデザインに。光の入り方もデザインの妙といえそうです。

6階小ホールにあらわれたスギの木立

 

 

■「都市建築における木の復権を目指す」木材会館

エントランスホール

 

国産材の需要低迷という状況を変えたい、「木の国 日本」の名にふさわしい建築を、という想いでつくられた木材会館。

2009年の竣工から今年で16年が経とうとしています。

時を経るにつれて木は変色します。私が訪れた際も、バルコニーなど日差しを受ける場所はもれなくグレーに色が変わっていました。木とのコントラストを生み出しているコンクリートも、木の灰汁によって少しずつ黄ばんでいき、もしかしたら数年後、数十年後にはコンクリートと木が同じような色になっているということもありえるそうです。時間の経過とともに、変化していくのも木のおもしろみですよね。

最上階にあたる7階のバルコニー

木材会館を見学して、改めて日本は木の国なんだな~と実感しました。

 

今回は昼間におじゃましたのですが、木材会館は実は夜景も美しいのだとか。オフィスの明かりがついたとき、この外観はどんな見え方をするのか、実際に見てみたいところ。今度は夜に訪れてみたいと思います。

1階屋内階段

 

事前予約で見学可能なので、興味がある方はぜひ訪れてみてください。

https://www.mokuzai-tonya.jp/mokuzaikaikan/index.html

 

【参照】

木材会館小冊子「都市建築物にも木の潤いを!―中高層ビルへの木材活用策―」(東京木材問屋協同組合)

7階バルコニーの眺望も見どころのひとつ!

アートと椅子の関係性を探る「アブソリュート・チェアーズ」

投稿日カテゴリーALL BLOGインテリアの疑問・相談テーブルと椅子リビング空間に合う暮らしの提案憧れのライフスタイル

 

椅子って、家具のなかでもとりわけファンが多いアイテムですよね。

「Yチェア」で有名なデンマークの巨匠ウエグナー、「セブンチェア」のヤコブセン、ミッドセンチュリーをけん引したイームズなどのデザイナーズチェアには、今もなお熱い視線が注がれています。

CONNECTコンフォートチェア

 

多くの人を魅了する椅子は、家具としてだけでなく、絵画などにもよく登場します。以前このブログで紹介した“ゴッホの椅子もそうですが、椅子がアーティストにとっても魅力的なモチーフだったということがうかがえます。

 

 

現代美術のなかの「椅子なるもの」とは

 

そんな椅子に焦点をあてた美術展が開催されていたので、足を運んでみました。タイトルは「アブソリュート・チェアーズ」。“現代美術のなかの椅子なるもの”というサブタイトルがつけられています。

愛知県美術館にて9/23(月・祝)まで開催中

 

入場してすぐに目についたのは、台所用のスツールの上に自転車の車輪がくっついた作品。こちらは、レディメイドの手法で有名なマルセル・デュシャンの作品。彼の最初のレディメイドといわれる≪自転車の車輪≫です。撮影不可だったので、ここではお見せできないのですが。椅子としての最大の機能「座る」ということを排除したこの作品を見て、「う~ん」となってしまいました。全然理解できない(笑)

このデュシャンの作品を筆頭に第1章は「美術館の座れない椅子」というテーマでくくられています。

 

岡本太郎の≪坐ることを拒否する椅子≫は、座面に挑発的な顔が描かれていて、ゴツゴツして座りにくそうな椅子が並んでいます。あの岡本太郎さんですから「座ってのんびりしてる場合じゃないんだよ!」という私たちへの叱咤激励なのかな、と感じました。

カラフルでポップな作品、ジム・ランビーの≪トレイン イン ヴェイン≫は、中古の椅子をペイントして切断し即興的に組み上げたものだそう。解説文には「まさにその“座る”という役割を封じることで、物体としての椅子がもつユニークな構造が前景化する」と書かれていました。

切断されて本来の姿を失った椅子に、アートとしての機能や価値がうまれた、という解釈なのかな~(あまりわかっていない…笑)

 

展示は全部で5つの章で構成されています。

先に紹介した第1章「美術館の座れない椅子」に続いて第2章は「身体をなぞる椅子」。

 

 

アーティストが捉えた“椅子と身体の相互作用”が第2章のテーマ。

椅子の構造って人間の身体の構造と似ていますよね。つまり肘掛けは腕、脚は足という感じで。ゆったりと椅子に身体を預けたり、うたた寝をしたり、背筋を伸ばして座ってみたり、より快適に座れるように身体をなぞるようにデザインされていたりします。

ハンス・オブ・デ・ビーク《眠る少女》

 

椅子は身体をなぞらえて作られているけれど、これが逆転して人の身体が椅子に倣うという場面もあり、それを代表するのがロッキングチェアや車いすである、と解説文に書かれていました。

椅子って自分を“受け入れてくれるもの”包んでくれるもの、という受動的なイメージがあったけど、椅子そのものが動くという点でいうと能動的な機能もあったりするんだな~と考えながら、作品を見ていきました。

 

第3章は「権力を可視化する椅子」、第4章「物語る椅子」、第5章「関係をつくる椅子」と続き、全5章で国内外28組の作家による80点を超える作品が展示されています。

アートユニット“副産物産店”による廃材を再利用した椅子。来場者たちが座れるようになっていて、コミュニケーションが生まれる場を想定しているそう

 

ただ眺めるだけでもおもしろい「椅子なるもの」

 

正直、「椅子なるもの」の解釈は難しくて頭がおいつかなかったのですが、なにも考えずに作品をただ眺めるだけでもじゅうぶん楽しめました。展示されている座ってもいい椅子に腰かけて、「これってどういう意図なのかな」、「車いすって意外と座り心地がいいね」とか、それぞれの感想なり解釈を話しているうちに、その行為こそが椅子がもたらしているものなんだなと感じました。まさに「関係をつくる椅子」です。

 

第5章「関係をつくる椅子」に展示されたオノ・ヨーコ≪白いチェス・セット / 信頼して駒を進めよ≫

 

平日は作品に座ったりチェスの駒を触ることもできます

 

アートのなかに組み込まれた椅子を見た後で、もう一度家具としての椅子に焦点をあててみるのもおもしろいのかな、と感じました。

興味がある人はぜひ見に行ってみてください。

 

宮永愛子《witing for awakening -chair-》。透明な樹脂で封印された椅子はナフタレンでつくられたもの。歴史と記憶が刻まれた椅子のこれまでの時間や、アーティストが費やした時間を表現しています

 

 

【アブソリュート・チェアーズ~現代美術のなかの椅子なるもの】

愛知県美術館にて2024年9月23日(月・祝)まで開催

 

初心者でもできるウッドプランクの魅力とは?

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIYリビング空間に合う暮らしの提案憧れのライフスタイル

毎日暑いですね。

私は、すでにバテバテの夏を迎えております。

ところで、みなさんは夏といえば何を思い浮かべますか?

私は、花火、スイカ、かき氷、ラジオ体操! 私は、なぜだか懐かしいシーンを思い浮かべてしまいます。

みなさんのなかには、夏といえばバーベキュー!という人も多いのでは? 私は今年バーベキューのチャンスに恵まれたら、「ウッドプランク」にトライしてみたいと思っているんです。

「ウッドプランク」とは、木の板の上に食材をそのまま載せてグリルする調理法のこと。

海外ではもはや定番の「ウッドプランク」。ようやく日本でも定着しつつあるようですが、実は私はまだ未体験なのです。

今年の夏は、ぜひ挑戦してみたいなと思ったので、いろいろ調べてみました。

 

ウッドプランクとは

プランク=板、つまり「ウッドプランク」は木の板に乗せて焼く調理法。直接網の上に食材をのせるバーベキューと違い、木の板の上に食材を置き、板ごと焼くのが特徴です。

 

手順は、

①木の板を水に浸す。

バットなどに水を張り、木の板を30分~1時間ほど水に浸します。浸す時間は木の厚みに応じて調節してください。

このとき、水の代わりに白ワインに浸すと香りも移っていっそうおいしく仕上がります。

②食材をのせて焼く

魚や肉、野菜、パン、チーズなど、お好みの食材を木の板にのせ、上から蓋(なければアルミホイル)をかぶせて蒸し焼きにします。

 

手順といってもたったこれだけ!手軽にいつもよりワンランク上のバーベキューになりそうで、早くもワクワクです。

 

岐阜県飛騨市の「HIDA WOOD PLANK」

 

「ウッドプランク」はキャンプギア専門店やホームセンターなどでも販売されていますが、私がいいなと思ったのはコチラです。

「HIDA WOOD PLANK」 (画像提供/Newie)

 

アウトドア商品の企画販売などを手掛ける「Newie(ニューウィー)」さんの「HIDA WOOD PLANK」です。岐阜県飛騨市の広葉樹を使ったもの。「さくら」「くり」「ほお」と3つの樹種から選ぶことができます。

お手頃な価格というだけでなく、地域資源を活用したいという理念があるところにも魅力を感じました。

実は、建材や家具として利用される広葉樹はごくわずかなんです。扱いにくい小径木は、製紙や燃料用のチップとして流通するしかないのが現状でした。そんななか、広葉樹の新しい活用法として考えられたのが「HIDA WOOD PLANK」です。

森林資源に恵まれた岐阜県飛騨市(画像提供/Newie)

 

「広葉樹に新たな価値をつけて活用していきたい」という飛騨市に共鳴し、誕生した「HIDA WOOD PLANK」。製品化に至るまでのコラムもホームページに掲載されているので、興味がある人は見てみてください。

 

ホームページには、ウッドプランクの使い方やレシピなども詳しく掲載されています。こちらを参考に、みなさんもワンランク上のバーベキューを楽しんでみてはいかがでしょうか。

画像提供/Newie

「はじめてのプランクバーベキューガイド」

https://newie.jp/pages/wood-plank-beginner

 

「プランクBBQの極意! 初めてでも手軽に燻製風を楽しめるバーベキュースタイル」

https://newie.jp/blogs/column/16

 

あまりの暑さに目が回りそうですが、熱中症には気を付けつつ、涼しい山奥で夏の想い出づくりができたらいいな~と思っています。みなさんも、よき夏休みをお過ごしください。

 

 

【参考・協力】

Newie

https://newie.jp/