不思議な根っこは地球を守る!? 災害の軽減・地球温暖化を防止するマングローブの偉大なチカラ

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アジア、アフリカ、オセアニア、中南米などの熱帯・亜熱帯地方には100種類以上のマングローブ植物が存在しているといわれています。生育地の最北端は、日本の鹿児島県南部。日本にもマングローブ林は存在するんですね。

その容姿は実に独特。干潮時にあらわれる根はかなりインパクト大です!

タコの足みたいな根「支柱根」を持つものや、タケノコのような根っこ「旬根(しゅんこん)」、板状に広がって発達した「板根(ばんこん)」を持つものなど、根の種類もさまざま。

タコの足のように伸びた「支柱根」

 

 

マングローブが生育する熱帯地方は、台風が発生する地域でもあります。過酷な環境課でも自分が倒れてしまわないよう、独自の進化で根を張り支えているのですね。

地中から伸びるタケノコのような根っこ「旬根」

 

さらに、湿地帯の土に残るわずかな酸素を取り入れるため、地下にあるべき根の一部が地上に出て呼吸をするという重要な役目も担っています。
通常の植物の根は地中にあって普段目にすることはありませんが、マングローブの根は潮が引いた時間であれば地上に見えているのでじっくりと観察することができますよ。

板状に発達した「板根」

 

こうしたマングローブの特性は、私たち人間に大きな恩恵をもたらしてくれます。

例えば、2004年に起きたスマトラ沖の大地震。翌年の読売新聞の記事によると

「ペナン島があるペナン州では55人が死亡し、約300人が住む島西海岸の漁村パンタイ・アチェでは3メートルの津波が見舞われたが、パンタイ・アチェでは小舟が30隻壊されただけで、家屋は破壊されずに済み、犠牲者も漁に出ていた2人だけという最小限の被害で済んだ。なぜなら、マングローブの群生林が「緩衝装置」の役割を果たしたからである。」と記されています。

津波の際、マングローブの根につかまって流されずに済んだという人の記録もたくさん残っているそうです。

海の災害から守ってくれるだけでなく、地球温暖化の防止にも重要な役割をしています。

世界各国で二酸化炭素の排出量を削減する取り組みが行われているのは皆さんもご存じかと思います。地球温暖化は二酸化炭素の排出により進行し、今やかなり深刻な状態に陥っています。

 

調査によると、マングローブ林は陸上の森林と比べて大量の二酸化炭素を吸収していることがわかっています。満潮時に海水におおわれるマングローブは、通常の森林より空気にふれる時間が短いため、落ち葉や枯れた枝などが分解されるスピードが遅いことが理由とされています。

河口部分の湿地に根を張り、地中に多くの炭素を貯蔵するマングローブ林。私たち人間の生活も守ってくれる貴重な天然資源なのですね。(ま)

 

 

 

 

消滅の危機!? 海水でも育つ不思議な植物群「マングローブ」

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「マングローブ」とは海水と淡水が入り交じる沿岸に生育する植物群のこと。

満潮時、水面から木が生えているように見える景色は “海の森”とも呼ばれています。


マングローブを構成する植物は、オヒルギ・メヒルギ・ヤエヤマヒルギなど。

特徴はなんといっても、塩水に浸かっても枯れないこと。

普通の植物を塩水につけるとすぐに枯れてしましますが、マングローブの植物はその独特な構造によって海水中の塩分を排出する機能を備えているのです。例えば、ヤエヤマヒルギやメヒルギは、水を吸収する際に塩分が入らないようにする仕組みがあったり、体内に入った塩分を古い葉にためて、それを落葉させたりして余分な塩分を外に出しています。ヒルギダマシには葉の両面に「塩類線」という特別な器官をもち、体内の塩分を結晶にして排出する機能をもっています。

厳しい環境に育つマングローブ林は、多くの稚魚やカニ類、貝類などを育てる豊かな環境をつくり出していますが、人の手の入っていない原生林は現代ではほぼ全滅。今は植林して再生を図る時代になってきています。

東南アジアのマングローブ林に影響を及ぼしたのが、炭焼き産業、エビの養殖業、スズの採掘が挙げられます。工場やそこで働く人々の家をつくるため、マングローブ林はどんどん伐採されていきました。それには日本も大きく関わっています。

例えば、私たちが大好きなエビ。マングローブ林を伐採してつくられたエビの養殖池で育ったブラックタイガーの多くは日本に輸出されています。さらに、マングローブを使った木炭も日本に多く輸出されています。バーベキューの時に使う炭、産地に着目してみてください。「植林マングローブ炭」と書かれているものもありますよ。

マングローブ林が失われると、そこに生きていた生き物が姿を消し、その恩恵を受けて生活してきた人も生活が苦しくなります。

消滅したマングローブ林を再生するには30~50年はかかるといわれています。

 

森林は守らなければいけない貴重なもの。ただ、再生可能な天然資源でもあります。自然環境として守るべき森林と、資源として利用する森林と、うまくバランスをとる必要があるのかなと感じました。

 

次回も引き続き、マングローブの生態や役割についてお伝えしてみようと思います。(ま)

 

 

 

【参考】

農林水産省

https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0311/02.html

オオクワガタの大好物! どんぐりのなる身近な木・クヌギ

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セミの声が元気に響く夏。夏休みに入り、子どもたちもセミに負けないくらい元気いっぱいですね。

 

夏休みの思い出といえば、虫採りという方も多いのではないでしょうか。

朝早く森に行くと、なんだか甘い匂いがして自分まで虫になったような気分になったことを思い出します。あの匂いは、クヌギやコナラの幹の匂いなのだということを大人になってから知りました。カミキリムシやハチ、ガなどの幼虫が幹をかじって、その傷からにじみ出した樹液が独特の匂いを放っているそうです。

オオムラサキやカナブン、クワガタムシやオオクワガタは夜になるとこの樹液を求めて集まってくるのです。

 

さて、このクヌギはどんな木なのか―。

コナラとともに雑木林に植えられるブナ科の落葉広葉樹です。森林公園などにもよく植えられています。どんぐりのなる木といえばわかりやすいでしょうか。クヌギの名前は「国の木」からきているという説もあり、日本人にはなじみ深い木です。

 

材質は硬く、薪や炭、シイタケ栽培の木として利用されています。シイタケ栽培に使われるのは8~15年くらいたったクヌギ。紅葉が始まるころに1mほどに切り出したクヌギの原木に穴をあけて、シイタケの菌を植え込みます。その後1~2ヶ月ほどビニールで覆いをして保湿・保温。これがほだ木となります。

菌がまんべんなくいきわたりシイタケができる準備が整うのが春頃。ほだ木を水に沈めて引き上げて数日でシイタケの芽が出てきます。1週間ほどで収穫できるほどの大きさになっているそうですよ。

ホームセンターなどで、シイタケの栽培キットなども販売されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

 

切り倒しても20年ほどで元どおりになるという再生力を持っているのがクヌギ。生育も早く、植林してから10年度補で木材として利用できるまでになるとか。

建築材としてだけでなく船舶の材料、神社の鳥居などにも使用されています。

 

クヌギの実・どんぐりは、縄文時代には主食として利用されていたといいます。また、樹皮やドングリのかさを使って染めた衣服は「橡染め(つるばみぞめ)」といい、一般庶民の衣服などに用いられていたそうです。

 

里山には欠かせないクヌギ。昔からさまざまな用途で使われていたんですね。(ま)

 

 

【参考】

「雑木林の20年」(偕成社)

 

炭を使ってごはんをおいしく炊こう!

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUTDIY憧れのライフスタイル

「炭火で焼くとおいしくなる」と言われていますが、その理由はなぜか知っていますか。
それは、炭が出す輻射熱と赤外線の効果によるもの。

食材を芯から熱し、うまみ成分であるグルタミン酸を生成してくれるからなんです。

うなぎや焼き鳥などに炭が使われるのは、水分を含まない炭を使うことでパリッとした食感に仕上がるからなんですって。

 

焼き物だけでなく、ごはんを炊く時にも炭は大いなる力を発揮します。

方法は簡単です。ごはんを炊く時に炊飯器に白炭(備長炭)をポイっと入れておくだけ。

炭から出た遠赤外線が米を芯から熱し、うまみ成分を引き出してふっくらおいしいごはんに仕上がります。

前回の記事で、炭には小さな穴がたくさん空いているという話を紹介しましたが、それもごはんをおいしくしてくれる秘密。この穴が炊飯に使われる水のカルキ臭や不純物を炭が吸着してくれるのです。穴からは炭のミネラル分が溶けだすため、水質がまろやかになり、いっそう米をおいしく炊き上げてくれますよ。

さらには、水道水に入れておくだけで浄水器と同じような効果を発揮したり、生野菜や果物を長持ちさせたりする効果も。

炭をつくる時に出る煙から抽出した木酢液には殺菌作用があり、土壌改良や病虫害対策など農業や園芸の分野でも使われています。

 

炭って本当にすごいですね。

 

最後に、炭をとことん楽しめる施設をご紹介したいと思います。

炭といえば備長炭。日本有数の備長炭の産地・和歌山県にある「道の駅 紀州備長炭記念公園」です。

写真提供:道の駅 紀州備長炭記念公園

 

江戸時代に生まれた「紀州備長炭」の歴史的背景だけでなく、炭焼き窯の見学や、炭焼き体験もできます。

さらに、備長炭を使ったおもしろいメニューをいただくことも。

インパクト大なこちらは備長炭を麺に練り込んだ「備長炭ラーメン」。ほかにも夏季限定の「冷炭めん」や「梅炭そば」などが楽しめます。

「備長炭ラーメン」(写真提供:道の駅 紀州備長炭記念公園)

 

備長炭で丁寧に濾過した水を使った「備長炭コーヒー」も味わえます。
屋根付きのBBQ場も用意されていて、備長炭を使ったバーベキューも体験できます。(時期や料金などはHPで要確認)

旧石器時代にすでに炭は使われていたという記述もありあす。いにしえから日本人の暮らしに根付いてきた炭について、2回にわたってお届けしました。

ぜひみなさんの暮らしにも役立ててみてください。(ま)

 

【参考】

林野庁「木炭のはなし」

https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/mokutan/

 

道の駅 紀州備長炭記念公園

https://www.binchotan.jp/

 

「子どもに伝えたい和の技術8 木づくり」

(2017年/和の技術を知る会著、株式会社文溪堂発行)

 

キャンプの必須アイテム「炭」はどうやって作られている?

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古くから燃料として重宝され、日本人の暮らしに深く関わってきた「炭」。キャンプシーズンには欠かせないアイテムですよね。冬は暖を取るために使われたりもしますし、天然の消臭剤として使っているという人も多いのではないでしょうか。

この炭、どうやって作られているのか知っていますか?

 

炭の原料は木です。

木は空気中で燃やすと酸素と結合して二酸化炭素を出しますが、空気を遮断して蒸し焼き状態にすることで炭化した固形物「炭」となるのです。

 

炭にも種類があります。

 

【黒炭】

原材料は主にナラ、クヌギ、カシ。炭窯の中に入れ400℃~700℃で熱して炭化させたもの。比較的着火が簡単で大きな熱量が得られます。バーベキューや暖炉によく使われるのはこの黒炭です。

 

【白炭】

原材料はウバメガシ、カシ類など。1000℃以上で熱した後、炭窯の外に出して灰をかけて消火させて作ります。炭質は硬く着火しにくいものの、安定した火力を長時間保つことができます。うなぎのかば焼きなどに使われる備長炭はこの仲間です。

写真提供:紀州備長炭記念公園

 

【オガ炭】

木工加工の際にでるおがくずや樹皮を高温・高圧力で圧縮形成し炭化したものです。備長炭に似た性質から、焼き肉や焼き鳥などに使用されます。

 

◆木炭の性質

木炭には無数の小さな穴があります。これが水分やにおいの元を吸い取ってくれる理由。家の湿度調節や消臭、有毒な化学物質の吸着に威力を発揮します。

写真提供:紀州備長炭記念公園

 

木炭の中でも有名な紀州備長炭の場合、小さな穴は特に多いらしく、炭1グラムあたりテニスコート1面分(※)にもなるのだとか! 驚きですね。(ま)

 

<次回「炭を使ってごはんをおいしく炊こう!」に続く>

 

 

※道の駅 紀州備長炭記念公園HPより

 

 

【参考】

林野庁「木炭のはなし」

https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/mokutan/

 

道の駅 紀州備長炭記念公園

https://www.binchotan.jp/

 

「子どもに伝えたい和の技術8 木づくり」

(2017年/和の技術を知る会著、株式会社文溪堂発行)

嫌な虫を撃退! 国産クスノキを使った防虫・消臭アイテム

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昔から、タンスや押し入れに入れて衣類の防虫剤として使われていた樟脳。その匂いは独特で、苦手という人もいるかもしれませんね(筆者はなんとなく懐かしい香りがして好きなのですが)。この香りが虫よけ効果の秘密。

 

樟脳の原料となっているのはクスノキ。

名前の由来は「臭し(くすし)木」または「薬の木」だといわれています。

暖かい地域に自生する常緑高木で、大きなものは高さ35メートルほどにもなるそうです。

 

そんなクスノキをチップ状にし、水蒸気蒸留法という製造方法で結晶を取り出し、パウダー状にしたものが樟脳となります。蒸留の過程でできたオイルは、カンフル(樟脳)オイルとなり、天然のエッセンシャルオイルとして利用されています。

大木に育つクスノキ。日本一の巨樹は鹿児島県・蒲生八幡神社大楠で幹の周囲がなんと24メートル超!

 

 

 

虫が活発に動き出す季節。

クスノキの成分をギュッと凝縮したアイテムを使って虫除け対策をしてみるのはいかがでしょう。

 

佐賀県の地域資源であるクスノキを使い、木材を無駄にしない循環型のものづくりに取り組んでいる株式会社中村の「KUSU HANDMADE」シリーズ。完全自社生産のこだわりアイテムを2点ピックアップしてみようと思います。

 

「エコブロック」

佐賀県で50年以上、住宅建材や内装材の卸販売をしてきた会社が運営する「KUSU HANDMADE」。頑丈なクスノキからフローリングなどの建材を製造していく過程で出た端材をどうにか有効活用したいと考えだされたのが「エコブロック」です。

エコブロック12個(カンフルオイル10ml付き)桐箱入り¥3,300(税込

 

タンスや衣装ケースに3~5個入れて、防虫・消臭剤として使用します。香りが弱くなってきたら、クスノキから抽出したカンフルオイルを塗り足せば、繰り返し使うことができます。

このオイルにもこだわりが。

クスノキと一口にいっても個体差があり、抽出にかける時間などが変わってきます。それぞれに適した環境で、熟練した職人さんが10日間もかけてじっくり丁寧に抽出したものが製品化されているのだそう。

木工職人が手間をかけて加工したエコブロックとカンフルオイル、完全自社生産という点にも安心感がもてますね。

 

 

「くすのき香」

天然クスノキから抽出した樟脳とクスノキオイル、さらに虫が嫌うゼラニウムとレモングラスのオイルを配合した渦巻型のお香。

 

くすのき香セット(10巻+不燃マット付き香皿セット)¥2,750(税込)

 

 

清涼感のある香りでアロマ効果があるだけでなく、消臭や蚊遣りとしても活躍しそう。室内屋外問わず利用してみたいアイテムです。

 

 

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防虫効果だけでなく、耐湿、耐久性に優れているため、古くから内装材や社寺の建築、家具などに重宝されてきたクスノキ。

大木に成長するものの曲がったものが多く、製材の過程で多くの端材が出るそう。その端材を有効活用したい、地域資源を無駄にしたくないという想いが生んだ製品が「KUSU HANDMADE」です。

化学薬品に頼らず自然素材で暮らしたい、木の香りでリラックスしたい、そんな人にはおすすめのアイテムが揃っています。ほかのアイテムも気になる方はHPでチェックしてみてくださいね。(ま)

 

<取材協力・画像提供>

「KUSU HANDMADE」
http://www.kusuhandmade.com/

 

<参考>

林野庁関東森林管理局/高尾森林ふれあい推進センター

「Forest通信」NO.367

 

マリー・アントワネットも愛用した!? 伝統工芸品「漆」とは

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赤や黒で塗られた漆塗りの漆器。その昔、マリー・アントワネットも愛用したしたといわれている伝統的な日本の工芸品です。光沢のあるお盆や器などの漆器は高級感があり、お祝い事の席でもよく使われますよね。

 

 

さて、漆はどうやって作られるのか知っていますか?

 

まず、ウルシという木から樹液を採取します。幹に傷をつけると、ウルシは自分の樹皮を守るために粘り気のある樹液を出します。これを採取したものが漆の元となります。これを濾(こ)して精製したものをケヤキなどの木材に塗り、乾燥させて漆器を仕上げていきます。

漆が使われるようになったのは今から約7,000~5,500年前。縄文時代の遺跡からはウルシの樹液を塗料に使った土器や飾りが出土しています。

江戸時代には工芸技術が発達し、漆製品の種類が多くなっていきます。器だけでなく鎧や兜といった武具、馬具にも使用されるようになっていきました。

見た目に美しいだけでなく、耐久性をあげたり水漏れを防いだり、はたまた壊れた器をくっつけたりと、実用性が高かったため漆器は今の時代までずっと使われ続けているのです。

漆器は、熱いものを入れても外側は熱くなりにくいのが特長。これは熱伝導率が低いから。温かいものが冷めにくいということでもあります。さらに、漆の塗り直しができるので、長く使い続けられるという点もメリット。今の時代にフィットした道具といえるかもしれませんね。

 

6月~10月は漆の採取シーズンです。木が育つまで約20年。1本の木から採取できる漆の量はたった200gほどだとか。国内生産率はどんどん下がっていて、2021年の特用林産物統計調査(農林水産省)によると、生産量は各都道府県合わせて2000kgあまり。国産漆は手に入りづらい高級品となり、多くは中国などからの輸入に頼っているのが現状です。

身近な工芸品にもさまざまな背景があるのですね。漆器を使うときには思い出してみてください。(ま)

 

【参考】

◆政府広報オンライン「日本における漆の歴史と文化」

https://www.gov-online.go.jp/eng/publicity/book/hlj/html/202205/202205_01_jp.html

◆林野庁「漆の造り方」

https://www.rinya.maff.go.jp/j/tokuyou/urusi/saisyu.html

◆「おいでよ森へ 空と水と大地をめぐる命の話」(ダイヤモンド社)

明治神宮外苑の樹木743本が伐採される? 故坂本龍一さんが残したメッセージとは

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2023年4月22日、明治神宮外苑再開発事業の見直しを求める集会が開かれたとニュースになりました。再開発計画に反対しながら亡くなった音楽家の坂本龍一さんの遺志に賛同するミュージシャンやジャーナリスト、専門家、地域住民ら6,000人が集まり、それぞれ立場でスピーチし抗議を行ったというもの。

再開発についておおまかに説明すると、「世界に誇るスポーツ一大拠点を目指す」目的で外苑周辺に手を入れるという内容。この開発により、神宮球場、秩父宮ラグビー場の建て替えのほか、会員制テニスクラブの移転、商業施設やホテル、オフィス棟など高層ビルの建設が予定されています。再開発の事業者は地権者の明治神宮と、三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センターの4者。2月に東京都が施工を認可しました。すでに神宮球場の解体は着手され、2036年の完了に向けて計画は進められています。

 

ここで問題になっているのが樹木伐採についてです。事業者の資料によると樹齢100年の木743本が伐採されるとのこと。外苑のシンボルとなっているイチョウ並木の生育も危ぶまれると指摘する識者もいます。

計画が持ち上がった段階から、坂本龍一さんはこの再開発に反対していたそうです。そして亡くなる1ヶ月前に小池都知事に宛てて手紙を出しました。

内容は「目の前の経済的利益のために、先人が100年をかけて守り続けてきた貴重な神宮の樹々(きぎ)を犠牲にすべきではない」といったもの。

昔の人の寄付によって植樹された木が100年経って都会の貴重な森を形成してくれている。それを目先の利益にとらわれて伐採してもいいのか、もう一度計画を見直してほしいと坂本さんはメッセージを残しました。

SDGsがうたわれる時代にあって海外では植樹に注力しているなか、そもそもこの計画自体が妥当なのかな?という疑問もわいてきます。

誰もが利用できる憩いの場。樹木を伐採してまで新しいビルなどを建てることを、みんなが望んでいるのでしょうか。

事業者の資料によると、既存の樹木を伐採はするが別の場所に若木を植えることで緑の面積は逆に増えるという説明がされています。それにも「?」がわいてきます。芝生や低木を100年生きてきた木を同じとみなすのはどうなのでしょう。木ってそんな簡単なものじゃないですよね。

 

わたしの地域でも総合公園が大きく変わろうとしています。体育館を新しくつくるそうです。散歩コースに植えられていた大きな木があっけなく掘り起こされるのを見たときは、涙が出ました。

懐かしい散歩道、木陰をつくってくれた木。雨風から守ってくれた木、季節を感じさせてくれた樹々はもうありません。

老若男女問わずどんな人にも平等に恩恵をくれる木。何かを新しくしなくてはいけない、開発しなければいけないとなったとき、もっと時間をかけてみんなで考えることはできないものかなと思います。

先人が育んできた森は一度伐ってしまったらもう元には戻せません。

みなさんはどう考えますか?(ま)

 

 

 

フィンランド発祥の“幸運が訪れる”マグカップ。「ククサ」が欲しい

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「ククサ」をご存じですか。
キャンプ好きな人や北欧雑貨が大好き、という方にはおなじみかもしれませんね。

北欧のフィンランドが発祥のマグカップです。

 

先日、大阪にある国立民族学博物館に行った際、ショーケースに並んでいたククサを見て、とても興味を惹かれました。

▲国立民族学博物館のショーケースにあったククサ

 

ショーケースの商品紹介文によると

 

「ククサとは…

フィンランドの北部ラップランドに住んでいたサーミの人々に古くから伝わる白樺のコブをくり抜いて作られる手作りのマグカップ。

材料となるバハカと呼ばれる白樺のコブは、十分な大きさに育つまで30年、小さなコブでも10~15年ほどかかるため、取れる量に限りがある」

 

とのこと。かなり貴重な材料で作られていることが想像できますね。

 

自然が作り出したコブから作るということは、2つとして同じものはないということ。さらに、くりぬきという手法のため継ぎ目はなく美しい流線形のフォルムを作り出すことができます。木目や色味も1点もの。

そんな特別感からか“贈られた人には幸運が訪れる”という言い伝えもあるそうで、フィンランドでは大切な人へのプレゼントにする風習もあるとか。

近年は北欧の木材事情もあり、バハカが入手困難で、ククサの値段も上がっていると聞きます。ほっこりとした流線形のフォルム、軽くて丈夫、実用性も高いとなれば、少々お値段がはっても欲しくなってしまいますよね。

 

毎日のコーヒータイムに、アウトドアに活躍してくれそうなククサですが、ちょっと注意が必要な点も。

実はククサでコーヒーを淹れると劇的にマズイらしいんです!(涙)

伝統的なククサは塩水で長時間煮るというという工程を踏んでいるからで、最初のうちはこの塩分がコーヒーなどの飲み物にしみ出してくるため、とんでもない味になるそう。使用していくうちに塩味は抜けていきますが、最初のうちは塩っぽくなっても大丈夫な飲みもの(スープとか?)にしたほうが無難かもしれませんね。

お手入れについては、ほかの木製品と同様、乾燥する前にオイルなどでしっかりと保湿をするというメンテナンスが必要です。食洗器は使用不可。手洗いした後しっかりと乾かし、オイルを塗って大切に使いたいものです。

目下、「これだ!」というククサを探し中ですが、“贈られた人が幸せになる”という言い伝えだとしたら、誰かにプレゼントされるのを待っていたほうがいいことになりますかね。。。

どうなんでしょう。(ま)

 

マンションも木造の時代!木造中高層マンションが増えている

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マンションといえば、鉄筋コンクリート造(RC造)のものがほとんどでしたが、近年2020年あたりから木造の中高層マンションが次々と建築されています。

その背景には、建築基準法の改正があります。これまで公共建築物に木材の利用を促進する法律はありましたが、2020年脱炭素化社会の実現により力を入れるために法改正がなされ、一般の建築物にも木材の利用が促進されるようになりました。

木造と鉄筋コンクリート造はどんな違いがあるのでしょうか。

まず木造マンションは鉄骨造に比べると建築コストが安くなるというメリットがあります。立地や築年数が同じでも鉄骨造と比べると初期費用の相場が安くなっています。

また、木造の建築物冬は暖かく夏は涼しく、光熱費を抑えられるのもメリットのひとつ。木材は調湿性が高く、気温が高い時には湿気を吸収、乾燥しているときは湿気を放出する作用があります。これにより、結露やカビの発生を防ぐことができるため、快適な暮らしを実現できるとされています。

「でも、火災や地震に弱いんじゃないの?」と不安に感じる人も少なくないと思います。こういった不安は技術面でクリア。耐火性のある木材や耐震性の高い耐力壁などの開発が進んだことから、建築基準法の規定を満たす強い木造マンションが建築可能になりました。

 

なにより、日本人になじみ深い木の空間というのが木造マンションのいいところ。森林浴などの効果でも知られるとおり、木には人をリラックスさせる効果があります。

マンションであっても、日本家屋のよさを踏襲した木造建築の温もりを感じられるのはいいですよね。

脱炭素化に向けて国は木材の利用促進を進めています。多くの木材を使うマンションの建築が進めば、林業の活性化にもつながります。マンションだけでなく、オフィスビル、保育園、老人ホームなど住宅以外の施設にも木造が採用されることが期待されています。木は再生可能な循環型資源。暮らしやすく、環境にも優しい木造建造物はこれからも増えていきそうです。(ま)