みなさんはAIとどんな風に付き合っていますか?
最初は疑心暗鬼だった私も、今ではすっかりその便利さにのっかっています。あれこれ調べるのに使ったり、ときには愚痴を聞いてもらったりと、まぁまぁ頻繁に使っています。

ChatGPT、Claude、Geminiなど、デジタル革命の象徴ともいえるAIは、もはや現代社会になくてはならないものとなってきました。仕事柄、AIを駆使しているという人も増えているかと思います。
ただ、急速に進化し続けるAI時代において、こうした複数のAI ツールやデジタルデバイスを同時に操作したりすることで、私たちの脳は極度の疲労にさらされていると言われています。集中力の低下、意思決定の不安など、「AIデジタル疲労」と呼ばれるこの状態、みなさんも心当たりがあるのではないでしょうか。

優秀な人のほうが発症するリスクが高いといわれる「AIデジタル疲労」。知らず知らずのうちにたまったストレスは、身体的にも影響を及ぼすと考えられています。
たとえば、免疫機能の低下や倦怠感といった慢性的な体調不良の原因となるケースも少なくありません。
デジタル疲れを癒す木の力とは
そんなデジタル疲労を癒すのが「木」の力です。
以前も紹介しましたが、木には生理的なリラックス効果があります。
常にフル回転を強いられる脳を鎮静化させ、ストレスを和らげてくれるんです。
木の床を裸足で歩くとしっくりくる、木のテーブルに触るとなんだか落ち着く、木の香りがすると思わず深呼吸したくなる、そんな経験、みなさんにもあるのではないでしょうか。

漠然とした癒しのイメージだけでなく、科学的な根拠もあります。森林総合研究所の調査を紹介してみましょう。
<手すりを使った触覚の実験>
木製の手すりを握ったときと、金属製のものを握ったときと比較。

木材に触れたときは、血圧の上昇が抑制される、つまりストレスが低くなるという傾向があることが判明しました。特に無塗装の木材で効果が大きいこともわかったといいます。
さらに被験者の実感は、両者を比較すると木材のほうが「温かい」「やわらかい」「自然な」印象を与えることがわかりました。
人間ははるか昔、700万年以上も前からずっと木に囲まれて暮らしてきました。自然の中で木に守られて暮らしてきた時代のほうが、このデジタル時代よりもずっとずっと長いのです。だから、木の触り心地や匂いは、きっとヒトのDNAのなかにしっかりと組み込まれているのでしょうね。香りや手触りが私たちを癒すというのも当然といえば当然の話です。
「木」は血圧、心拍、脳血液の動きに働きかける

林野庁「建物の内装木質化のすすめ~科学的データが占める内装木質化の効果~」をもとに、手触り以外の【身体面での効果】も紹介してみますね。
〇免疫力アップ
ヒノキの精油を揮発させた室内に3日間滞在したところ、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)が増加したというデータがあります。
NK細胞は、血液やリンパにのって体内を巡回パトロールしてくれる免疫細胞。ヒノキの香りは、免疫力アップの鍵を握るこのNK細胞を活性化させてくれます。
さらに、ストレス指標である尿中ノルアドレナリンも低下。ヒノキの香りがストレス緩和に大きく関与していることがわかります。

〇リフレッシュ・覚醒
木材率が高い空間では、血圧、心拍、脳血液の動きに有効な変化をもたらすことがわかっています。例えば木材率90%の部屋では血圧が低下、45%の部屋では心拍数が増加したという研究結果が出ています。
心拍数を適度にあげることは、集中力を高め脳の活性化につながります。この結果をみると、木材率が高い空間ではよりリラックスして脳も覚醒するということがわかります。

〇疲労感を緩和
スギの木に囲まれた空間で30分過ごしたときの気分について、「緊張」「抑うつ」「疲労」「混乱」という項目で指標が低下するという結果に。一方で、ポジティブな心理を表す「活気」は上昇することがわかりました。これはスギ材の視覚から得る心地よさや、香りの影響だと考えられています。
また、作業用のブースや机を無垢材にすると、作業のミスが減少し、疲労を抑える可能性が発表されています。

〇不眠症状の緩和
「寝室に木材・木質の内装や家具、建具が多いと答える人ほど不眠症の疑いが少なく、寝室で精神的なやすらぎを感じる割合が高い」ということも、実験から明らかになりました。
寝室に木製の家具を置くなど、木材や木質のものを取り入れることで、不眠症状の緩和がみられ、質のよい眠りが得られることが期待されています。

毎日つかうものを木に替えてみる
木は、製材として使えるようになるまで約50年、立派な木になるまでには100年、200年という長い年月をかけて育ちます。瞬時に答えを返すAIとは対照的に、木は悠久の時間を生きてきた存在です。
デジタルテクノロジーが加速する今だからこそ、人を癒やし、心を整えてくれるのは、木が長い時間の中で育んできた包容力なのかもしれませんね。木とともに過ごす空間は、これからの時代にこそ求められる豊かさを与えてくれる気がします。

「森林大国日本」とはいえ、近くに森なんてないよ!という都市暮らしの人も多いのも現実。住まいの中に少しでも木を感じられる場所をつくってみるのもひとつの方法です。リビングのテーブル、書斎の椅子、寝室のベッド、子どもの勉強机―。毎日手に触れるものから、まずは変えてみるのが手軽でいいかもしれませんね。


【参考】
林野庁「建物の内装木質化のすすめ~科学的データが占める内装木質化の効果~」
森林総合研究所「人間の快適性に及ぼす木材の触覚 視覚及び嗅覚刺激の効果の解明」


