国産杉とヒノキを使った“開かれた円環”。森と人、伝統と未来をつなぐ藤本建築の展示【後編】

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前回に引き続き、『藤本壮介の建築~原初・未来・森』についてのお話を。

キトヒト(木と人)天然木一枚板家具の魅力と使用方法や樹木知識、自然を愛する人へ送る木を使ったインテリアの情報 | 国産杉とヒノキを使った“開かれた円環”。森と人、伝統と未来をつなぐ藤本建築の展示【後編】

藤本壮介さんについて少し振り返ってみましょう。
1971年、北海道の自然豊かなまちに生まれ、森に囲まれて育ちました。幼いころから自然のなかで遊び、ものづくりに親しんできたといいます。建築家となってからは、これまでに100を超えるプロジェクトに携わってきました。最近では、2025年大阪で開催中の博覧会のシンボル「大屋根リング」を手がけたことで広く知られています。

今回訪れた展覧会は、そんな藤本さんの初の大型個展となります。8つのセクションにわかれて、藤本さんが手がけた建築やその背景などが紹介されていますが、今回は後半を紹介してみようと思います。

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◆大屋根リングを体感できる大模型

後半、5つ目のセクションに展示されているのは、国際博覧会の象徴ともいえる「大屋根リング」を約1/5のサイズで再現した大型模型です。

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写真などで見たことはあっても、実際にはどんなものか想像しきれなかったのですが、大型模型と会場で流れていた藤本壮介さんのインタビュー映像を通して、その背後に込められた強いメッセージを感じ取ることができました。

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「大屋根リング」全体像の模型

世界各国のパビリオンを包み込むようにつくられた木造の巨大なリングですが、コンセプトは“開かれた円環”。高さ約20メートル、幅約30メートル、そして全長およそ2キロメートルに及ぶ円形の構造物は、すべて木造のフレームでできています。多様な伝統や価値観を持つ世界各国の人々が集う場にふさわしい「世界をつなぐ」というイメージが込められており、そのスケールと象徴性に力強さを感じました。

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さらに注目すべきは、すべてが木造でつくられている点です。空間をまとめ上げながらも開放感をもたらす格子のフレームには、木ならではの存在感があります。

藤本さんによれば、木造建築は「世界最先端の未来の建築」ともいわれ、伝統と未来のテクノロジーを結びつけるものだそうです。日本の森林資源を活かしつつ、クラフトマンシップを凝縮した象徴的な建築が「大屋根リング」なのです。

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しかも使われているのは、国産の杉やヒノキ。博覧会をきっかけに、日本の木材にもスポットライトが当たるのはうれしいことです。

展示会場の大型模型は、実際に格子フレームの中へ入ることができます。木に囲まれたその空間は、まるで森の中に足を踏み入れたような感覚。不思議な心地よさに包まれ、博覧会の会場の雰囲気を少しだけ感じとれた気がしました。

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また、構想段階のスケッチや記録写真、設計図面に加え、日本の伝統的な木造技術「貫(ヌキ)接合」についてのパネル展示も。“開かれた円環”というコンセプトとともに、藤本さんが思い描く未来の建築をより立体的に想像しながら、じっくり見入ってしまいました。

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◆建築キャラクターたちの話に耳を傾けて

続くセクション6は、かわいいぬいぐるみたちのおしゃべりルーム!

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「大屋根リング」のほか、藤本建築を代表する「ハンガリー音楽の家」、「スーク・ミラージュ/光の粒子」、「深圳博物館新館」など9つの建築がモチーフとなったぬいぐるみが、テーブルを囲んでしゃべってる!

キャラクターたちがそれぞれの建築についての雑談をするなかで、藤本建築に対する理解を深めてもらうという意図で作られているそう。建築のキャラクターたちの動きがかわいくて、動画を撮っている人がたくさんいましたよ。思わず撮りたくなる気持ちわかります(笑)。

 

◆「たくさんの ひとつの 森」

セクション7の展示空間には「仙台市(仮称)国際センター駅北地区複合施設」の大きな吊り模型が。

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これはかなりの迫力がありました。実際に完成したところが想像できないくらいのスケール。音楽ホールと震災メモリアルの拠点を想定した複合施設の建築で、現在設計が進行中の案件だとか。完成は東日本大震災からちょうど20年を迎える2031年に予定されているそうです。

 

◆近未来、球体に住んで空を飛んでいるかも!?

最後のセクション8は「共鳴都市2025」。デジタル映像がメインの展示となります。900以上の大小の球体が自在につながり、高さ500メートルの空間に約5万人が暮らす都市をイメージした映像が上映されていました。

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住宅や学校、オフィスなどの機能を備え、モバイルデバイスを使って空を飛んだり、空間を移動したりできる未来都市を描いています。自分が空中を飛んでいるような視点で映像が流れるので、もし会場がもう少し暗くて動くシートなんかに座っていたら、臨場感たっぷりのアトラクションのように感じていたかも。

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空中にあるリングに学校や病院などがあるイメージ

建築という枠を超えた未来都市のイメージは、言葉で説明するのが難しいけれど、映像をみながら「近未来、こんな世界が本当に訪れるのかも」と思ったら、とてもわくわくしました。興味があれば、みなさんにもぜひ実際に体感してみてほしいです。

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◆世界的に注目される木造

今回の展示で印象に残ったのは、木材がすごく未来的な素材なんだということでした。木は二酸化炭素を吸収し、伐採しても植林によって循環でき、持続可能性という観点からみてもとても頼もしい存在です。


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日常にも同じ思想があります。たとえばrewoodは、役目を終えた座卓を再生し、新しい家具へと生まれ変わらせるプロダクト。スケールは違っても「木を循環させ、次の価値につなぐ」点で共通しています

 

フランスで開催されるパリオリンピック、パラリンピックの主要施設「アクアティクスセンター」(2024年竣工)や、スウェーデンにできたボルボの展示施設「ワールド・オブ・ボルボ」(2023年竣工)、オーストラリアに2026年完成予定の世界一の高さとなる木造ビル「アトラシアン・セントラル」など、世界中の建築家が木造を採用。木の特性を生かした建築が続々と誕生しています。

 


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rewoodを取り入れたオフィスビルは、世界的に広がる木造建築の流れの中で、再生木材の価値を示しています

一方で日本は、世界でも有数の森林資源を持ち、千年以上にわたり木造建築を受け継いできました。その背景を思うと、藤本さんがつくった「大屋根リング」は単なるシンボルにとどまらず、日本の技術や文化を世界へ示す存在に感じられますよね。

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藤本さんの建築は、自然と人、伝統と未来をつなぐもの。そのメッセージを五感で感じられる、見ごたえたっぷりの展示でした。展示を見終えて、今後完成していく藤本さんの建築にも、ますます興味がわいてきました。展示の開催期間は11月9日(日)まで。よかったら見に行ってみてください。

 

<藤本壮介プロフィール>

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年に建築設計事務所を設立。ヨーロッパ書く国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。2025年大阪国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任する。

主なプロジェクト/《House N》(2008年、大分)、《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《House NA》(2011年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)、《白井屋ホテル》(2020年、群馬)、《マルホンまきあーとテラス(石巻複合文化施設)》(2021年、宮城)、《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)など。

※森美術館「藤本壮介 略歴」より抜粋

 

『藤本壮介の建築/原初・未来・森』

2025.7.2(水)~11.9(日)森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

 

 

<参照>

森美術館

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/

 

Matsuoライタープロフィール
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古道具や古着、古民家など“お古”に惹かれるライター。雑誌、webを中心にまちづくり、ものづくり、グルメ、音楽、著名人インタビューなど多ジャンルの取材・執筆を手がけています。生活者の視点で、身の回りの“木”に関する話題をお届けしていきます。

水野 照久監修者
名古屋で創業60年を迎える家具店の代表。2代目代表として約30年「家具は人をシアワセにする」を理念として、木を素材としたいくつかのブランドをプロデュースし、新しいモノづくりにデザイナーと作り手と取り組む。