あの大屋根リングの設計者が語る“森・都市建築・未来”を体感。『藤本壮介の建築』へ【前編】

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圧巻でした。

最初のエリアからずらりと並べられた模型がすごい。なんとその数1,000点超!

キトヒト(木と人)天然木一枚板家具の魅力と使用方法や樹木知識、自然を愛する人へ送る木を使ったインテリアの情報 | あの大屋根リングの設計者が語る“森・都市建築・未来”を体感。『藤本壮介の建築』へ【前編】

訪れたのは、東京は六本木にある森美術館で開催中の『藤本壮介の建築/原初・未来・森』。藤本さんの名前は、ご存知の方も多いかと思います。日本を代表する建築家で、最近では大阪国際博覧会で大きな話題を呼んだ、あの大屋根リングの設計をされた方です。

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この展示に興味を持ったのは、タイトルにある「原初・未来・森」に興味をひかれたから。建築と森は切っても切れないものではありますが、数々の建築を手がけてきた藤本さんが、それをどのように捉えているのかが気になって、ずっと見に行きたいと思っていたのです。

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展示は全部で8つのセクションにわかれて、藤本さんの思想やプロジェクトを紹介していました。展示の中では、藤本さんのインタビューがいくつも公開されていたのですが、そのなかでとても印象的だったのが、セクション2の動画で流れていものでした。

 

◆大都会・東京と、大自然・北海道の共通点とは

北海道生まれの藤本さんは、幼少期から身近に雑木林がある環境で育ったといいます。自然の中で走り回ってきた藤本さんが、大人になって東京に出てきたときに感じたのが、意外にも「居心地いい」ということだったと語っていました。

それはなぜか―。

「東京の入り組んだ細い道が雑木林や森の小径なんかと似ていたから。雑然とした東京と雑木林はおそらく共通している」ということを話していました。「雑木林は乱雑に小枝が生えていて、守られているような安心感がある。密度高く囲まれているけれど、同時に開かれてもいる。東京の木造家屋や電信柱なんかがそれと同じ役割をしていると思った」という旨のことを答えていらっしゃいました。

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北海道の大自然と東京の大都会。相反するように思えますが、藤本さんにとっては共通する安心感や包容力といったものが感じられたのだそう。その感覚をもとに、建築に森という性質を取り入れようという考えに至ったそうです。

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藤本さんが手がけた太宰府天満宮の仮殿。かなりの存在感だが3年という期間限定の建築のため2026年ごろには解体される予定

 

藤本さんのこうした思想は、数々の建築に反映されてきました。個人住宅、商業施設、ホテル、複合施設と四半世紀にわたりさまざまな建築プロジェクトを手がけてきた藤本さんですが、今回はその設計図や模型に加え、インスタレーションや空間を体感できる大型模型、プロトタイプ(試作品)が一堂に会する展覧会なのです。

 

◆建築模型の森を散策

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少し話が飛びましたが、私なりに展示を振り返ってみたいと思います。
まず、1,000を超える模型が並ぶセクション1「思考の森」は、藤本さんが今まで手掛けた100を超える建築プロジェクトの全体像が一望できるようになっています。完成形ばかりでなく、アイディアのもととなったオブジェや中途段階の模型、バリエーション違いなども含まれ、それぞれのプロジェクトが完成までにどんな道をたどったのかを想像することができます。

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ペットボトルや、ナイロンスポンジ、マッチ箱を積み上げたものなども並んでいます。私たちが日常よく見るものも建築のヒントになっているんですね。

さらに、1,000超の模型は3つの系譜に分類されています。

まず1つめは、“閉じているはずの円環が外部に開かれていることを表す「ひらかれ かこわれ」”、2つめは、“空間の用途や性質があいまいで多義的である「未分化」”、“多数の部分が一つに建築を構成する「たくさんのたくさん」”。

この3つが、プロジェクトの中で融合しながら、森のようにゆるやかなつながりを生み出しています。

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建築に明るくない私にはちょっと難しく感じてしまったのですが、模型を眺めていると、なんとなく藤本さんの思想の糸口がつかめるような気持がしました。

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◆あわいの空間から切り取られた都市の風景を見る

セクション2「軌跡の森~年表~」は、世界的な背景や建築業界の重要な出来事とともに、藤本さんの軌跡をたどるパネル展示。冒頭で紹介した、藤本さんのインタビューの内容はここで見ることができます。

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さらに進むとセクション3「あわいの図書室」のゾーンへ。

藤本さんの建築に着想を得たテーマに沿ってブックディレクターが選書した40冊の本が真っ白な椅子に1冊ずつ配置されています。「本を読む/読まない間(あわい)にある空間」として設けられた実験的な場所ゆえ、来場者は本を読んでも読まなくてもいいし、窓からの景色をただ眺めるだけでもOK。大きく開かれた窓から見える都市の風景と藤本さんの建築思想を重ねてみるのもおもしろそうです。

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続いてセクション4の「ゆらめきの森」。建築の中で人はどう動いているのか、を可視化した展示となっています。模型の中を動くたくさんの人を俯瞰で眺めながら、建築という空間での人の動線ってこんな感じなんだな~と実感しました。

今日のところはここまで。次回は、「大屋根リングの大模型」を中心に書く予定です。お楽しみに!

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<藤本壮介プロフィール>

1971年北海道生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、2000年に建築設計事務所を設立。ヨーロッパ書く国の国際設計競技にて最優秀賞を受賞。2025年大阪国際博覧会の会場デザインプロデューサーに就任する。

主なプロジェクト/《House N》(2008年、大分)、《武蔵野美術大学美術館・図書館》(2010年、東京)、《House NA》(2011年、東京)、《サーペンタイン・ギャラリー・パビリオン2013》(ロンドン)、《ラルブル・ブラン(白い樹)》(2019年、フランス、モンペリエ)、《白井屋ホテル》(2020年、群馬)、《マルホンまきあーとテラス(石巻複合文化施設)》(2021年、宮城)、《ハンガリー音楽の家》(2021年、ブダペスト)など。

※森美術館「藤本壮介 略歴」より抜粋

『藤本壮介の建築/原初・未来・森』

2025.7.2(水)~11.9(日)森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)

 

 

<参照>

森美術館

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/soufujimoto/

 

 

Matsuoライタープロフィール
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古道具や古着、古民家など“お古”に惹かれるライター。雑誌、webを中心にまちづくり、ものづくり、グルメ、音楽、著名人インタビューなど多ジャンルの取材・執筆を手がけています。生活者の視点で、身の回りの“木”に関する話題をお届けしていきます。

水野 照久監修者
名古屋で創業60年を迎える家具店の代表。2代目代表として約30年「家具は人をシアワセにする」を理念として、木を素材としたいくつかのブランドをプロデュースし、新しいモノづくりにデザイナーと作り手と取り組む。