卒業式で歌う「蛍の光」の“すぎのと”って杉の戸?

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別れと出会いの春。

ご卒業、ご入学の皆様、ご家族の皆様、おめでとうございます!

 

卒業式では今も「蛍の光」が歌われているのでしょうか。

なにせ、卒業式なんぞウン十年前に済ませてしまったので、今はどんな形式なのかまったくわかりません。

ただ、筆者の時代は卒業式と言えば「蛍の光」を合唱して卒業生を見送る、というのが一般的だった記憶があります。

(ちなみに、当初のタイトルは「蛍」だったそうです)

 

あまりにも有名すぎる歌なので、冒頭くらいはだれでも歌えるのではないでしょうか。

 

蛍の光

窓の雪

書(ふみ)読む月日重ねつつ

いつしか年も

杉の戸を

あけてぞ今朝は別れ行く

 

ですね。

何気なく歌ってしまいましたが、ここに出てくる「杉の戸」について少し調べてみました。

歌詞に出てくる杉の戸とは、そのままの意味で杉でできた扉のことだそう。

「杉」の戸を開けるという意味と、時が「過ぎる」という掛詞になっているとか。さらにそれに続く「開けてぞ」は杉の戸を「開ける」という意味と、夜が「明ける」がかかっているという説があるそうです。「杉の戸を開ける」と「時が過ぎる」「夜が明ける」がかかっているなんて、けっこう手の込んだ歌詞だったのですね。

 

昔の住宅や学校の窓枠や扉は杉で作られたものが多かったとか。なじみ深い木だったということと「ヒノキの戸」では掛詞にもできないので、「杉」が歌詞に抜擢されたのかもしれませんね。

 

そういえば、先日東京に行った際、小金井公園のなかにある「江戸東京たてもの園」を訪れました。文化的価値の高い歴史建造物を移築して展示してあるのですが、「三井八郎右衛門邸」で見た杉の戸は、とても豪華なものでした。

主屋は1952(昭和27)年に建てられたもの。1階と2階の廊下に配された杉戸には様々な絵が施されていました。併設された土蔵(明治7年建築)には小千鳥図が描かれた杉戸も展示されています。こちらは主屋1階の仏間の廊下と1階の廊下にはめ込まれていたものだそう。

▲ガラス張りになっているので画像は少し見にくいですが、年季の入った味わいがたまりませんね

 

美しい木目と、そこに描かれた絵。どれを見ても素晴らしくて目を奪われてしまいました。

 

時がたつほどに重厚感を増す杉の魅力。かっこいいですよね。

 

三井邸だけでなく、園内にはすばらしい建物がたくさん展示されていて、東京にこんな場所があったんだ!と驚きました。みなさんも機会があればぜひ訪れてみてください。

 

というわけで、今回は杉の戸についてのお話でした。(ま)

Matsuoライタープロフィール
古道具や古着、古民家など“お古”に惹かれるライター。雑誌、webを中心にまちづくり、ものづくり、グルメ、音楽、著名人インタビューなど多ジャンルの取材・執筆を手がけています。生活者の視点で、身の回りの“木”に関する話題をお届けしていきます。

水野 照久監修者
名古屋で創業60年を迎える家具店の代表。2代目代表として約30年「家具は人をシアワセにする」を理念として、木を素材としたいくつかのブランドをプロデュースし、新しいモノづくりにデザイナーと作り手と取り組む。