『異端の奇才―ビアズリー展』で見た、アートと家具に息づくジャポニズム

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「異端の奇才―ビアズリー」展、滑り込みで行ってきました。
東京・丸の内にある三菱一号館美術館で開催中の私的一大イベント。会期は5月11日までですが、ギリギリのタイミングで見に行くことができました。

【異端の奇才―ビアズリー展】
東京都・三菱一号館美術館
2025年2月15日(土)~5月11日(日)
公式サイト

19世紀末のイギリスの画家、オーブリー・ビアズリー(1872-1898)。25歳の若さで亡くなるまでに、「アーサー王の死」や「サロメ」など、精緻な線描で鮮烈な作品を残しました。

私がビアズリーの絵と出会ったのは、つい最近のこと。作家・原田マハさんの小説のファンになり、いろいろな作品を買い集めて読むのが楽しみになっていました。原田マハさんの小説は、表紙のイラストがどれも素敵で、その中でもひときわ私の目に強烈に映ったのが「サロメ」の表紙でした。

アイルランド出身の詩人・劇作家として名をはせたオスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」をテーマにしたこの小説。血の滴る生首をなぞる指、サロメの表情―。サロメの異様なまでの執着を描写した絵が表紙を飾ります。

この絵に惹かれた私は、ビアズリーの絵を検索しました。「サロメ」のクライマックスは、宙に浮かんだサロメが斬首された預言者ヨハネの首を捧げ持ち、愛おしそうに口づけする「おまえの口にくちづけしたよ、ヨカナーン」の光景。一度見たら忘れられない作品です。まがまがしく妖艶で、私の目に鮮烈に残りました。

ビアズリー作「おまえの口にくちづけしたよ、ヨカナーン」1892~93年(プリンストン大学図書館蔵)

白と黒のモノクロームの世界、余白と精緻な線とのコントラスト。ビアズリーは幼いころから結核に悩まされており、寝る間も惜しんで夜な夜なろうそくの灯りの下で作品に没頭していたそうです。画家として活躍したのはたったの5年ですが、その作品は後世に大きな影響を与えました。

ビアズリー作「孔雀の裳裾」1893年(原画)、1907年(印刷)ロンドン、ヴィクトリア・安堵・アルバート博物館蔵

ビアズリーの絵について話し出すときりがないのですが、今回の展示で特徴的だったのは、画家の作品だけでなく、彼が生きた時代の家具も展示されていたことです。

建築家エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけた「ドロモア城の食器棚」

ビアズリーが生きた時代、イギリスでは日本の文化や芸術が注目を集め、芸術家やデザイナーたちはこぞってそのモチーフを取り入れていました。こうして生まれたのがアングロ=ジャパニーズ様式です。イギリス的「日本様式」の室内装飾やステンドグラスなどが生まれ、それらはビアズリーの作品にも大きな影響を与えたといわれています。

展示された中で特に印象的だったのは、ビアズリーが「サロメ」の挿絵に描き入れた可能性がある建築家エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけたコーヒー・テーブル。イギリス流の日本といった雰囲気を感じさせる作品です。ほかにも「ドロモア城の食器棚」、「ドロモア城の書きもの机」など、アングロ=ジャパニーズ様式の調度品も展示されていました。また、ロイヤル・ウースター社の「吉兆文カップ&ソーサー」や、ミントン社の「日本文物文皿」など、ジャポニズムの影響が色濃く残る作品が同時に展示されていたことで、ビアズリーの作品への理解が深まりました。

エドワード・ウィリアム・ゴドウィンが手がけたコーヒー・テーブル
エドワード・ウィリアム・ゴドウィン作「ドロモア城の書きもの机」
ミントン社「日本文物文皿」

以前紹介したゴッホの椅子もそうですが、アートと家具は互いに影響しあっていると感じます。装飾としての役割や空間の美学に共通点があるのかもしれません。

ビアズリーの絵に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。そして、原田マハさんの「サロメ」は、アートに興味がない方でも楽しめる傑作。気軽に読んでみてほしい一冊です。

<参考>
『芸術新潮』2025年2月号、新潮社
『ビアズリー展』図録(東京:三菱一号館美術館、2025年)、青幻舎

※画像すべて「ビアズリー展」にて筆者が撮影

“ヴィヒタ”でフィンランドの伝統的サウナを楽しむ!!

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昨今のサウナ人気はブームを超えてもはや文化といえるかも。

昔から銭湯文化が根付いている日本では、サウナが人気になるのもうなずける気がしますね。

みなさんはサウナ、お好きですか?

大量の汗をかくのはかなりの爽快感ですよね。発汗作用によって老廃物が排出されて、新陳代謝も活発になるというデトックス効果はよく知られるところかと思います。

白樺の若枝 “ヴィヒタ” で北欧サウナ気分

サウナの発祥の地・フィンランドでは、サウナのなかで“ヴィヒタ”を使う伝統的な方法があります。

聞きなれない言葉ですが“ヴィヒタ”とは、フィンランド語で「鞭」や「棒」といった意味。葉のついた白樺の枝を束ねて乾燥させたもので、フィンランド式のサウナに行くと、ドライフラワーのように吊り下げられているのを目にすることがあります。

“ヴィヒタ”は、香りを楽しむだけでなく、鞭のように体に打ち付けるというサウナ独特の楽しみ方もあります。

火照った体を叩くことで、新陳代謝が活発になったり血行を促進、リンパの流れを促すのが“ヴィヒタ”なのです。

 

アウトドアサウナでも試してみたい “ヴィヒタ”

最近ではアウトドアでサウナを楽しむ人も増えてきました。河原でテントサウナができるキャンプ場なども、急激に増えましたね。サウナで火照った体で川に飛び込むのはさぞかし気持ちいいだろうな~。

サウナ―の間では、移動式サウナにも注目が集まっているそうです。「自分だけのサウナが欲しい」「時間と場所に縛られずにサウナを楽しみたい」というユーザーに人気なのだとか。

気になる人は「コダマカーゴサウナタイプ」をチェックしてみてください。

大型の車両でなくてもけん引できる、コンパクトサイズのサウナ。国産のヒノキでできたサウナ内は、天然の木ならではの香りでヒーリング効果が感じられます。

「コダマカーゴサウナ」の中で“ヴィヒタ”を試してみるのもよさそうですね!

 

 

“ヴィヒタ” だけじゃない。白樺の恵み

“ヴィヒタ”は白樺の若葉を枝ごと束ねたもの。

白樺は国内では北海道、東北地方に多く分布している樹木です。水分を多く含むため、雪解け前に幹に穴をあけて樹液を集めるのだそう。ほんのりと甘みがある樹液は、シロップ状に煮詰めて健康飲料水や化粧品などに活用されています。昔のアイヌの人たちは樹液を薬として、またお酒づくりに活用していたこともあるそうですよ(※)。

「ホワイトバーチ」とも呼ばれる白樺。サウナ用のアロマオイルも販売されています。熱されたサウナストーンにホワイトバーチのアロマウォーターをかければ、水蒸気とともにサウナ内にアロマの香りが漂います。

香りだけでなく、木材を使った家具、樹液を使った飲料水、樹皮を使ったカゴなどのクラフト製品と、白樺は1本丸ごと利用できることでも注目されています。そうそう、以前キシリトールガムの原料が白樺だという話もこのブログの中で紹介しましたので、気になるかたはコチラから読んでみてくださいね。

「北欧のシンボル・白樺・スキンケアやキシリトールがみうにも使われているって知ってた?」

 

昔から本場フィンランドで愛用されてきた“ヴィヒタ”。

サウナだけでなくお風呂に置いておくだけでも香りは楽しめるそうなので、サウナ―じゃない皆さまもぜひ試してみてください!

 

【参考】

(※)林野庁ホームページ「シラカンバ」

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/komagatake_fc/guide/36_sirakanba.html

 

北海道森林管理局「漫画で楽しく学ぶ北海道の森林」

https://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/square/index.html