明治神宮外苑の樹木743本が伐採される? 故坂本龍一さんが残したメッセージとは

投稿日カテゴリーALL BLOGBREAK OUT

2023年4月22日、明治神宮外苑再開発事業の見直しを求める集会が開かれたとニュースになりました。再開発計画に反対しながら亡くなった音楽家の坂本龍一さんの遺志に賛同するミュージシャンやジャーナリスト、専門家、地域住民ら6,000人が集まり、それぞれ立場でスピーチし抗議を行ったというもの。

再開発についておおまかに説明すると、「世界に誇るスポーツ一大拠点を目指す」目的で外苑周辺に手を入れるという内容。この開発により、神宮球場、秩父宮ラグビー場の建て替えのほか、会員制テニスクラブの移転、商業施設やホテル、オフィス棟など高層ビルの建設が予定されています。再開発の事業者は地権者の明治神宮と、三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センターの4者。2月に東京都が施工を認可しました。すでに神宮球場の解体は着手され、2036年の完了に向けて計画は進められています。

 

ここで問題になっているのが樹木伐採についてです。事業者の資料によると樹齢100年の木743本が伐採されるとのこと。外苑のシンボルとなっているイチョウ並木の生育も危ぶまれると指摘する識者もいます。

計画が持ち上がった段階から、坂本龍一さんはこの再開発に反対していたそうです。そして亡くなる1ヶ月前に小池都知事に宛てて手紙を出しました。

内容は「目の前の経済的利益のために、先人が100年をかけて守り続けてきた貴重な神宮の樹々(きぎ)を犠牲にすべきではない」といったもの。

昔の人の寄付によって植樹された木が100年経って都会の貴重な森を形成してくれている。それを目先の利益にとらわれて伐採してもいいのか、もう一度計画を見直してほしいと坂本さんはメッセージを残しました。

SDGsがうたわれる時代にあって海外では植樹に注力しているなか、そもそもこの計画自体が妥当なのかな?という疑問もわいてきます。

誰もが利用できる憩いの場。樹木を伐採してまで新しいビルなどを建てることを、みんなが望んでいるのでしょうか。

事業者の資料によると、既存の樹木を伐採はするが別の場所に若木を植えることで緑の面積は逆に増えるという説明がされています。それにも「?」がわいてきます。芝生や低木を100年生きてきた木を同じとみなすのはどうなのでしょう。木ってそんな簡単なものじゃないですよね。

 

わたしの地域でも総合公園が大きく変わろうとしています。体育館を新しくつくるそうです。散歩コースに植えられていた大きな木があっけなく掘り起こされるのを見たときは、涙が出ました。

懐かしい散歩道、木陰をつくってくれた木。雨風から守ってくれた木、季節を感じさせてくれた樹々はもうありません。

老若男女問わずどんな人にも平等に恩恵をくれる木。何かを新しくしなくてはいけない、開発しなければいけないとなったとき、もっと時間をかけてみんなで考えることはできないものかなと思います。

先人が育んできた森は一度伐ってしまったらもう元には戻せません。

みなさんはどう考えますか?(ま)

 

 

 

Matsuoライタープロフィール
古道具や古着、古民家など“お古”に惹かれるライター。雑誌、webを中心にまちづくり、ものづくり、グルメ、音楽、著名人インタビューなど多ジャンルの取材・執筆を手がけています。生活者の視点で、身の回りの“木”に関する話題をお届けしていきます。

水野 照久監修者
名古屋で創業60年を迎える家具店の代表。2代目代表として約30年「家具は人をシアワセにする」を理念として、木を素材としたいくつかのブランドをプロデュースし、新しいモノづくりにデザイナーと作り手と取り組む。