アジア、アフリカ、オセアニア、中南米などの熱帯・亜熱帯地方には100種類以上のマングローブ植物が存在しているといわれています。生育地の最北端は、日本の鹿児島県南部。日本にもマングローブ林は存在するんですね。
その容姿は実に独特。干潮時にあらわれる根はかなりインパクト大です!
タコの足みたいな根「支柱根」を持つものや、タケノコのような根っこ「旬根(しゅんこん)」、板状に広がって発達した「板根(ばんこん)」を持つものなど、根の種類もさまざま。
マングローブが生育する熱帯地方は、台風が発生する地域でもあります。過酷な環境課でも自分が倒れてしまわないよう、独自の進化で根を張り支えているのですね。
さらに、湿地帯の土に残るわずかな酸素を取り入れるため、地下にあるべき根の一部が地上に出て呼吸をするという重要な役目も担っています。
通常の植物の根は地中にあって普段目にすることはありませんが、マングローブの根は潮が引いた時間であれば地上に見えているのでじっくりと観察することができますよ。
こうしたマングローブの特性は、私たち人間に大きな恩恵をもたらしてくれます。
例えば、2004年に起きたスマトラ沖の大地震。翌年の読売新聞の記事によると
「ペナン島があるペナン州では55人が死亡し、約300人が住む島西海岸の漁村パンタイ・アチェでは3メートルの津波が見舞われたが、パンタイ・アチェでは小舟が30隻壊されただけで、家屋は破壊されずに済み、犠牲者も漁に出ていた2人だけという最小限の被害で済んだ。なぜなら、マングローブの群生林が「緩衝装置」の役割を果たしたからである。」と記されています。
津波の際、マングローブの根につかまって流されずに済んだという人の記録もたくさん残っているそうです。
海の災害から守ってくれるだけでなく、地球温暖化の防止にも重要な役割をしています。
世界各国で二酸化炭素の排出量を削減する取り組みが行われているのは皆さんもご存じかと思います。地球温暖化は二酸化炭素の排出により進行し、今やかなり深刻な状態に陥っています。
調査によると、マングローブ林は陸上の森林と比べて大量の二酸化炭素を吸収していることがわかっています。満潮時に海水におおわれるマングローブは、通常の森林より空気にふれる時間が短いため、落ち葉や枯れた枝などが分解されるスピードが遅いことが理由とされています。
河口部分の湿地に根を張り、地中に多くの炭素を貯蔵するマングローブ林。私たち人間の生活も守ってくれる貴重な天然資源なのですね。(ま)